郵貯膨張!--日本郵政はどこへ向かうのか vs.民間の百年戦争時代に逆戻り
初めに預入限度額の引き上げありき
政府与党が今国会に成立を目指す郵政改革法案。その改革の骨格を成す“大幹”には、経営形態、政府出資のあり方、事業の認可などが盛り込まれる。それに比べ、預入限度額は政令で規定されるいわば“枝葉”。制度設計上、骨子として最初に固まるのは大幹の部分のはず。ところが、今回は順序が逆転した。3月24日、他の重要事項より前に枝葉のほうが先に決定、発表されたからだ。
そればかりではない。預入限度額は今国会での法案成立とともに引き上げるという、見直し措置の中では最優先の扱いだった。
なぜ、それほど急ぐのか--。推測するに、業務の多様化が容易ではない郵貯にとって、貯金とそれを原資とする国債運用の利ザヤ収入以外に、収益拡大路線を進める手だてはない。やはり「初めに預入限度額の引き上げありき」の見直しだった。
このような見方に対し、亀井郵政相は「民間からの預金シフトなどの動きを見極めて、11年4月の法施行時に限度額を据え置くか、再び引き下げるかを最終決定する」と答える。法案成立から法施行までの1年間は預入限度額引き上げの“予行演習”と言いたげだが、これを「なし崩し的な限度額引き上げ」と見る民間金融機関の受け止め方のほうがはるかに現実的だ。
たとえば、限度額引き上げに合わせ1500万円預け入れた人に対して、法施行と同時に、「限度額は1000万円に戻します。少なくとも500万円は解約してください」と、郵便局の職員は対処できるのかといえば、それは無理だろう。
一方、今回の見直しでも、日本郵政、郵貯銀行、かんぽ生命の上場は想定されている。しかし、今のところ、これは漠然たる想定にすぎない。なぜならば、上場スケジュールや具体的な上場計画も示されていないからだ。