60台で美術展の常識を覆す「万能ライト」の正体 知る人ぞ知るメーカー・ミネベアミツミが開発

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一方、平成美術展は、できるだけ壁を減らし、いろいろなアーティストグループの作品を同じ空間に点在させていることが特徴だ。

展示デザインを担当した京都市京セラ美術館事業企画推進室企画推進ディレクターの前田尚武氏は、「椹木氏からはできるだけ壁を立てないで、いろんなアーティストグループの作品が広場の中に一緒に同時にあるような空間作りをしてほしいと言われた」と語る。空間を移動しながら複数の作品をみることによる鑑賞体験や比較する意味を増幅させ、テーマやメッセージをより強く発信する効果があるのだ。

スポットライトとしての二刀流も

しかし、壁がなければ明るさや色温度が隣のアーティストグループのゾーンに影響を与えてしまう。そのため、通常のベース照明とスポットライトの組み合わせではこのような展示方法を実現することが難しい。

サリオは光の明るさ、色温度、配光角も調整できるため、ベース照明とスポットライト、双方の役割を果たすことができる。つまり、サリオを使うことにより、壁で仕切らずとも明るいゾーンと暗いゾーンを干渉させずに、展覧会全体をそれぞれの作品が共存する大きな空間として表現することができるのだ。「照明のあり方は数十年の間固定化されていたが、サリオによって照明の新たな段階がスタートした」(藤原氏)。

前田氏は「映像展示もプロジェクターの性能の向上によって可能性の幅が広がった。照明がLEDに変わることでできるようになったことがたくさんある。10年後くらいには大きく(現代美術が)変わるのではないか」と期待する。制約となっていた照明がサリオのように高機能化することで、現代美術そのものの可能性も広がりそうだ。

田中 理瑛 東洋経済 記者

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たなか りえ / Rie Tanaka

北海道生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。報道部、『会社四季報』編集部を経て、現在は会社四季報オンライン編集部。食品業界を担当。以前の担当は工作機械・産業用ロボット、ドローン、医療機器など。趣味は東洋武術。

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