60台で美術展の常識を覆す「万能ライト」の正体 知る人ぞ知るメーカー・ミネベアミツミが開発

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社会や美術の動きを振り返る巨大な年表「平成の壁」を、LED照明器具のサリオが照らす(記者撮影)

京都市左京区に位置する京都市京セラ美術館。新館「東山キューブ」の展示室に入ると、すぐ左手には長さ16メートルに及ぶ巨大な年表がそびえ立ち、中には14組のアーティストグループによる作品が渾然一体となっている。

京都市京セラ美術館で4月11日まで開催されている展覧会「平成美術:うたかたと瓦礫(デブリ)1989-2019」。美術評論家の椹木野衣氏が企画・監修し、自然災害や経済危機などに揺れた平成の美術がどのようなものだったのかを振り返る展示だ。

この展示の裏方で、密かに重要な役割を果たしているのが、高い天井に取り付けられたいくつもの照明器具だ。

照明はミネベアミツミが開発

使われているのは、LED照明器具「SALIOT(サリオ)」。極小ベアリングとステッピングモーターで世界シェア1位、スマートフォンの液晶用LEDバックライトなどでも高シェアを誇る、機械・電子部品メーカーのミネベアミツミが開発した。京都市京セラ美術館には100台弱が納入され、この展覧会では60台程度が使用されている。

展示室の天井に設置されたサリオ。ミネベアミツミは既存の技術を組み合わせた独自製品の開発に注力している(写真:ミネベアミツミ)

サリオは、スマートフォンやタブレットで光の照射方向、配光角、明るさなどをなめらかに調整できることが特徴だ。ミネベアミツミが強みとするLEDバックライト、モーター、電源、無線技術を組み合わせることで実現した。

従来、大型で天井の高い商業施設やショールーム、ホテルなどの照明の配置変更や調整は、脚立や高所作業車などに乗って手作業で行われている。サリオは、遠隔で光を調整できるようにすることでその危険や手間の軽減に役立つことを見込んで開発され、2015年から販売を開始し伊勢丹新宿本店などで採用実績がある。2021年度の売上高は海外を含め5億円を目指している。

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