コロナで起きた世界的な「電車離れ」の末路 「脱炭素」計画の支障になる可能性も
一部地域では、感染の恐怖から自動車の利用が急拡大した。アメリカでは中古車販売が急増し、中古車相場が跳ね上がった。インドでも、インターネットで中古車販売を行う会社の売り上げが2020年に大きく伸びた。その一方では、自転車の販売が伸びた地域もある。自転車の利用が多少増えてきたことを示す動きだ。
公共交通機関離れは将来に二重の不安をもたらす。都市の活動がパンデミックから回復する中、人々が公共交通ではなく自動車を使うようになれば、大気汚染と温暖化の対策に甚大な影響が出る。これが1つ目の不安だ。
2つ目の不安はさらに重い。公共交通機関の運賃収入がこのまま減り続ければ、必要な投資が行えなくなる。効率的かつ安全で、利用者にとって魅力的なサービスを提供するのに必要な投資だ。
頼みの綱は政府支援
ロンドン地下鉄は世界で最も利用者の多い地下鉄網の1つで、通常なら平日の利用者は毎日400万人ほどになる。しかし、現在は通常能力の2割程度での運行を余儀なくされている。
バスは地下鉄ほどガラガラではなく、便数も通常の4割程度だ。これらを所管するロンドン交通局は2020年に黒字を見込んでいたが、パンデミックで大打撃を受けてから経営は政府支援頼みとなっている。同局は、利用状況が以前の水準に戻るまで最低でもあと2年はかかるとみている。
「率直に言って、壊滅的な打撃を受けている」とロンドン交通局で都市計画部門の責任者を務めるアレックス・ウィリアムズ氏は話す。「懸念の1つは、公共交通機関の利用の大幅な減少に加えて、自動車の利用度合いが高まっていることだ」
ロンドンは都心部に流入する自動車の数を減らすことを目的に「渋滞税」を課している数少ない都市の1つだ。ロンドンとパリはコロナ禍のロックダウン(都市封鎖)を利用して自転車専用レーンの整備を進めた。