「20代で家業再建した2代目」が示す探究の凄み ミシュラン二つ星獲得したすし名店の流儀
ネタを口に入れてから酢飯(シャリ)を食べる。そのときにまず香りが持ち上がるかを判断します。そのあと咀嚼して味が伸びたかを確認します。
香りが持ち上がらなかったり、味が伸びなかったりしたら酢飯の味の調整が悪いか、もしくは相性が悪いと判断します。難しいのが酢飯の塩を強くすると酸が消えたり、酸を強くするとお魚の旨味を切ってしまったりすることです。砂糖を増やせば味がボヤける。この辺が非常に難しい。
僕の場合、10年かけて少しずつ微調整して良い塩梅を見つけてきましたし、今も微調整を続けています。
高品質のお米を収穫できる区画を管理
僕が今使っているのは北海道樺戸郡月形町産の「ゆめぴりか」です。石狩川と樺戸連山に挟まれた米作りに適した土地で、特に樺戸連山からの澄んだ雪解け水の恩恵を感じることができます。
5年ほど前、このエリアで米作りをしている「つきがたFARM」の岩崎貞治さんと出会いました。彼の広大な田んぼの中に、何故か毎年高品質のお米が収穫できる区画があるというのです。
岩崎さんに聞くと、水だけでなく、その区画は木と木の間に位置しているため、恐らく風の仕業も影響しているそうです。
植物は心地良い風に揺れることで細胞が活性化するといわれます。木々が強い風をさえぎることでよい環境になっているのではないでしょうか。
2020年にはこの区画を「一幸」の区画と名付け管理していくことになりました。ロマネ・コンティみたいだなと……。3年前まではその年の作柄により米を選んで、酢と塩の配合を毎年一から組み立てていましたが、同じ米なら調整の仕方もより深いところに踏み込んでいけるのではと、ますますやりがいが出てきました。
この田んぼ、生産者に出会えたことをうれしく思っています。
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