「20代で家業再建した2代目」が示す探究の凄み

ミシュラン二つ星獲得したすし名店の流儀

さて「ゆめぴりか」自体は、すし米には到底向いていないといわれている品種です。もち米のような強い粘りがあり、握ると団子のようになってしまいがちなのがその理由。しかし「一幸」の酢飯は、強い粘りがある米のほうが好都合なのです。

というのも、酢飯を炊くときは、酢が米の中に入るようにと土鍋で溶かすように炊いているからです。噛むことで酢がじわじわ出てきて、魚の脂と混ざり合い、乳化。口の中で味を変化させるのです。

ちなみに、酢飯を炊くのに土鍋は向いていないそうで、米の五つ星マイスターに全否定されて驚きましたが、それは「一般的に」という話ですから、僕は自分の感性を信じています。

木々に囲まれた「鮨 一幸」の区画(写真:井上浩輝)

わさびは当初、自分の給料で買っていた

修業を始めた頃、ひとり3000円の客単価だったので本物のわさびを買える環境ではありませんでした。でも練りわさびではすしの味が壊れてしまいます。現地へ行って自力で仕入れルートの開拓をするしかないと、静岡・中伊豆のわさび農家を訪ねました。

栽培の仕方をはじめ、香り、味わいなど多くのことを勉強させてもらいましたが、良いものは当時でも1万8000円/kgと高価でした。何年かは自分の給料で買っていました。

その後、いろいろなわさびを試しましたが、僕のすしにベストと結論づけたのは「真妻(まづま)」という品種です。清流の香りが感じられ、味にはコクがありすしの味を引き上げてくれます。

自力で仕入れルートを開拓したわさび(写真:井上浩輝)
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