国際機関の重要会議に日本人が入りにくい事情 感染症危機後の秩序形成にも重要な役割果たす

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この舞台に出演できるのは、国家ではなく、国際社会に認められた独立した個人だけである。両者とも2020年5月のWHO総会決議を起点として設立され、9月より開催されている。この2つの会議が中心となってこれまでの新型コロナ危機対応を検証し、感染症危機管理に関する新たな国際秩序を構想しており、その動向に各国が注目している。そこで構想された内容は、今年5月のWHO総会で提起され、採択されることとなっている(拒否される可能性もありうる)。

新型コロナ危機で指摘されている国際システムの不備は、過去3つの感染症危機で指摘された4つの国際システムの不備をすべて合わせたような様相を呈している。

例えば、中国からWHOや国際社会への未知の感染症発生に関する情報共有の遅れ、WHOの初動(緊急事態宣言発出)の遅れ、WHOによるパンデミックという用語の使用の遅れ、先進国によるワクチンの囲い込みが指摘されている。

「重要会議」に日本が入る意味

2021年1月に公開された両会議の中間報告書によれば、上記以外にも多岐にわたる問題が指摘されている。例えば、各国のパンデミック対策準備状況を測る指標の不備や、渡航制限に関するWHO勧告の不適切性、クルーズ船対応をめぐる国家管轄権の未整理、インフルエンザ以外の未知の感染症(Disease Xと呼ばれ、新型コロナウイルスはその典型)に関する病原体共有システムの未整備などが挙げられる。

戦後秩序は、往々にして少数の者によって構想されるため、その中に日本人が入り、日本の国益と国際公益の両方に資するような構想力を発揮することが重要である。

IPPPRとIHR検証委員会委員の顔ぶれを見ると、前者は国家元首や閣僚、国際機関トップの経験者で構成される政治的な意味合いがある会議であり、後者は感染症危機管理を熟知している専門家で構成されていることがわかる。

このような個人の資格で入会が認められる少数精鋭のクラブに、日本人は入っているのか。IHR検証委員会には日本人委員が入っているが、IPPPRには入っていない。そこに、国際政治における日本の限界が見える。

昨今、国際社会における重要な会議に個人として参画したり、国連機関トップの選挙で当選したりするためには、①英語で完璧に仕事ができること、②閣僚、または国際的な選挙で選ばれる組織の長の経験があること、③特定の専門分野に関する国際社会のインナーサークルにおいて個人名で認知されていること――、最低限以上3つの要素を有していることが必要条件となってきている。

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