外出自粛が気づかせた「コロナ前の日常」の異常

会社や学校に行かないことが救いになった人も

池上:新型コロナウイルスの影響と言えば、志村けんさんや女優・岡江久美子さんの「早すぎる死」が、みんなに衝撃を与えました。

近年、書店に行くと、死に関する書籍が目立つようになりました。平安時代末期、「往生伝」というのが盛んに作られた時期があるんですね。これは、今風に言うと、“終活本”です。死の事例集なので、「この人は、こんなふうに死んでいきましたよ」「こんなふうに幸せな死を迎えて、極楽浄土への往生は間違いありませんよ」といった話が並んでいます。これをみんなが読んだわけですよね。

「往生伝」は何種類も作られました。その後、中世でいったん途絶えるんですが、江戸時代に復刊されたり、明治期にも編纂されたりしています。考えてみれば、戦後日本を代表する娯楽小説家の1人、山田風太郎の『人間臨終図巻』も、死の事例集です。五木寛之さんの『完本うらやましい死にかた』も同様です。

死の事例集に触れることによって、死そのものには肉薄できないものの、周辺をうろうろできる、少し死を手元に引き寄せた気になるっていうんでしょうか。多くの人の死のストーリー、物語と出合うことによって、何か少し死と向き合うことができるとか、手元に引き寄せることができるとか。そういったストーリーを求めている人が少なくない、ということなのではないでしょうか。

死に向かっての参考書を求めている

池上:死についていろんな本が出ていますが、団塊世代に向けたものが多い、という気がします。「団塊世代って聞いたことはあるけど、何?」という若い方もいると思いますので説明しておきましょう。

もともとは、作家の堺屋太一さんの『団塊の世代』に由来するのですが、第2次世界大戦が終わり、少しずつ落ち着きを取り戻した1947(昭和22)年~1949(昭和24)年に生まれた世代のことです。厚生労働省でもこの年代に生まれた世代をそう呼んでいます。

この世代は、いわゆるマニュアル本世代なんですよ。受験時に、旺文社が出している『傾向と対策』を愛用した世代です。

あれは、団塊世代からなんですか。

池上:そうです。要するに、『傾向と対策』や過去問を読んで、一生懸命勉強して、受験に備えた世代なんです。言ってみればマニュアルというか、大学受験という未知の世界に行くための準備をするものが、受験参考書ですよね。まさに団塊世代が、死に向かっての参考書を求めているんじゃないかと思います。

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