「ほっともっと」がコメの自社生産に乗り出す訳 業界では異例!食材流通の「最上流」への進出

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コスト削減への具体策としてカギを握るのが、ICT(情報通信技術)など最先端技術を活用して省力化や生産性向上を図る「スマート農業」の導入だ。

水田に種を直接まく「直播」や農薬散布などには従来であれば人出がかかるが、ドローン(小型無人機)を使えば作業を大幅に効率化できる。田に入れる水量の管理にはセンサーを使い、荒天時にわざわざ目視で確認しに行く必要もなくなる。収穫量が多く業務用に向いた品種である「多収米」と合わせた生産法を検討していくという。

コスト削減の実現には長期戦

当面の課題はいかに早期に従来型の調達方法を下回るコストを実現するかだ。コメ作りに従事する同社の社員3人には農業経験がほとんどない。現地の大規模農家からの技術指導を受けられるとはいえ、素人の段階からノウハウを積み上げていくのは容易ではなく、長期戦の覚悟が必要になる。

自社の精米工場がある埼玉県でコメの生産に乗り出した(写真:プレナス)

佐々木室長も「1年目のコストが従来の仕入れ方法によるコストに勝てるとは思っていない。時間がかかるかもしれないが、中長期的にコストをどこまで下げられるかのチャレンジになる」と言う。

まずは5年程度で作付面積を30~50ヘクタールまで拡大することが当面の目標になる。これで海外使用分の4分の1を賄える計算になるが、長期的には海外9つの国・地域の「ほっともっと」や「やよい軒」で消費される1000トンの大半を自社生産米に置き換える計画だ。

そして、ゆくゆくは海外にある自社チェーン以外の日本食レストランや現地の一般消費者らへの外販を見据える。自前のコメを海外店舗で使い、その味が評判を呼べば、現地での一般販売の拡大につながるというサイクルを確立させる。そこで「ブランド米」としての評価を築くことができれば、新たな収益源としても期待できる。

国内では農業従事者数の減少や高齢化が進行し、それに伴う耕作放棄地の増加が深刻になっている。国内店はコメの使用量が海外とは桁違いに多いため、自社生産に置き換える計画は現時点でないが、そもそも国内農業が衰退すれば現状の調達方法にも支障が出てくる可能性さえある。

将来的に海外での販路拡大が軌道に乗っていけば、凋落の一途である国内農業を守る一助にもなりえるうえ、企業による農業参入の活性化にもつながりそうだ。

岸本 桂司 東洋経済 記者

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きしもと けいじ / Keiji Kishimoto

全国紙勤務を経て、2018年1月に東洋経済新報社入社。自動車や百貨店、アパレルなどの業界担当記者を経て、2023年4月から編集局証券部で「会社四季報 業界地図」などの編集担当。趣味はサッカー観戦、フットサル、読書、映画鑑賞。

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