トヨタMIRAIの未来が乗り物にとどまらない訳 エネルギーシステムとしての燃料電池を考える

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メリットは、燃料として使用する水素や酸素が枯渇しないこと。それに、化学エネルギーをそのまま電気エネルギーに変換することから発電効率が高い。また、CO2を排出しないばかりか、内燃機関の燃焼時に生成される人体に有害な物質(NOxやPM)も排出しない。つまり、SDGs(Sustainable Development Goals)が掲げる温室効果ガスの削減に寄与し、人類にとっても害がない。

「発電時、排出するのは水だけ」とする燃料電池のメカニズムを改める。まず、燃料である水素を構成する水素分子(H2)は、マイナス極で①水素イオン(H+)と②電子に分離。①H+はイオンを通す電解質を通りプラス極へ移動し、②電子は導線を通じてプラス極へ移動する。

次に、そのプラス極では酸素分子(O2)を構成する酸素原子(O)が①H+や②電子と結びついて水分子ができる(排出する水はここで発生)。つまり、導線を通じて電子が移動する=電流が流れる。これが燃料電池のおおまかな仕組みだ。

ただし、普及はわかりやすく多難

この紹介で終われば燃料電池システムはメリットばかりで人畜無害な「夢のパワートレーン」に思える。しかし、普及となれば前述した高価な車両価格に加え、燃料である水素の製造と管理、国の政策などと複雑に絡む。わかりやすく多難だ。

また、水素を車両のタンクに充填する水素ステーションの設置費用は、同規模の既存ガソリンスタンドの設置より約5~42倍も高額になる。他の場所で製造された水素を充填する「オフサイト型」で4~5億円、その場で水素を製造して充填する「オンサイト型」では30億円以上と言われる。「移動式」にしてもCO2を排出する大型トレーラー(ディーゼルエンジン車)で充填場所まで運ぶとなれば、温室効果ガスの削減効果は減少し、回送運転も含め手間も重なる。

さらに水素の充填には82MPa(約820気圧)という高圧状態と、マイナス35℃からマイナス38℃程度にまで下げる冷却環境が必要で、別途エネルギーの確保が不可欠だ。

こうした状況を踏まえMIRAIを送り出したトヨタは、FCVの核となるパワーユニット「燃料電池システム」の普及を促進することで、かかるコストを全方位から徐々に下げていく策をとった。

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