トヨタMIRAIの未来が乗り物にとどまらない訳 エネルギーシステムとしての燃料電池を考える

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直近の目標である温室効果ガス削減に向けては、「電動化or内燃機関」といった二者択一論では無理がある。「電動化and内燃機関」が現時点では優先度の高い議論だ。ガソリンや軽油以外の石油精製品を源にする業界は多いが、そこでの需給バランスや代替案の拡充もこの先の議論になろう。ともかく、温室効果ガスの削減には両サイドから近づく策が現実的であり、こうした流れは日本が旗振り役として世界に問いかけている。

もっとも、今のところ日本勢は弱い。欧州勢はBEVを核とした電動化ビジネスで強権発動し、世界を巻き込む。この状況をイソップ童話「北風と太陽」になぞらえれば、欧州が強い北風で、日本の歩み寄り案はさながら太陽だ。

初代MIRAIは約6年で約1.1万台を販売

そのうえで注目したいのがFCVの普及である。2014年12月に販売が始まった世界初の量産型FCV「初代MIRAI」は、日本・欧州・北米市場を中心に約6年間で約1万1000台が販売された。日本では2020年12月9日に2代目となる新型MIRAIの発売がスタートしている。

FCVには優れた製造技術と緻密な管理が必要ながら、初代が記録した累計販売台数は国内市場でトヨタ「ヤリス」が2021年1月に販売した台数の60%程度と圧倒的に少ない。補助金(MIRAIにおける2020年度実績は最大で141万9000円)があるにせよ、車両価格は710万円から、と高額だ。

MIRAI以外のFCV販売状況はどうか? 現在、日本においてはホンダ「クラリティ FUEL CELL」がリース形式で販売中。輸入車ではメルセデス・ベンツのSUV「GLC F-CELL」が過去にリース形式を採用し、ヒュンダイ(韓国)のSUV「NEXO(ネッソ)」も販売が近いと報じられているが、積極的な販売活動は見られない。

カーシェアリングでもFCVが選べる。オリックス自動車では「オリックスカーシェア」としてトヨタ「MIRAI」を用い最小15分単位でのカーシェアリングを提案。認知度向上を目指すが、本格的な普及はこれからだ。

試乗した新型MIRAIの後(筆者撮影)

FCVのパワーユニットは燃料電池。水を電気分解すると水素と酸素に分かれるが、燃料電池はその逆の水素と酸素との化学反応で電気をつくる。原理はとてもシンプルだ。

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