トヨタMIRAIの未来が乗り物にとどまらない訳 エネルギーシステムとしての燃料電池を考える

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具体的には、乗用車であるMIRAIで使用する燃料電池システムを、大型路線バスや、小型・大型トラック、大型トレーラー、そして電車や船舶などに転用して乗り物の分母を増やし、使われる先を増やすことで普及を促進する。また、小型トラックでは走行用としてだけでなく、搭載する冷蔵・冷凍システムの動力源としても燃料電池システムを活用する。

こうしたあらゆる乗り物への転用は、稼働密集地域における水素ステーションの拡充や各種インフラ設備の充実など波及効果が望めるため、社会的受容性も同時に高められる。

逆説的に考えれば、これまでの主役であったICEは、車種ごとの転用はあっても、求める性能が違うため一部を除いて商用車や他の乗り物にはそのまま使えなかった。

“小さな発電所”は自在に転用可能

燃料電池システムは、いわば“小さな発電所”なので組み合わせる電動モーターや補機類、水素タンク容量を変更することで自在に転用が可能。さらにトヨタでは、かねてより燃料電池システムをパッケージ化して事業者向けに販売している。こうして使う先が増えれば自ずとトヨタ流の「カイゼン」が進み、コストダウンへの道筋も立てやすい。数々の副次的効果が巡り巡って燃料電池システムそのものを支え、進化させるのだ。

筆者は、このMIRAIの燃料電池システムと電動モーターを2セット搭載した大型路線バスに公道で試乗した。同車両は、2018年から東京都交通局の都営バスとして運用されているFCバス「SORA」のプロトタイプ車両で、燃料である水素を充填するタンクは10本搭載し総容量600L、発進停止を繰り返す営業運転で200km走行が可能だ。

公道試乗したプロトタイプ(筆者撮影)

商用車ではコストが重要視される。車両価格もさることながら、ランニングコストも重要課題。試乗したFCバスの場合、水素1kgで8.4km走る計算になる。現時点、水素価格は高値で1kg当たり1210円なので1km走るのに144円が必要という理屈だ。

FCバスと同サイズのディーゼルエンジンを搭載した大型路線バスだと、軽油1L当たり2km程度走る(都市部での渋滞区間)。執筆時点での軽油価格換算では1km当たり62円。単純計算でいけば、燃料電池バスのランニングコストは、ディーゼルエンジン車の約2.3倍も高い。ここだけみればディーゼルエンジンが優勢だ。

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