トヨタMIRAIの未来が乗り物にとどまらない訳 エネルギーシステムとしての燃料電池を考える

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しかし、整備費用となるとグッとFCバスが安くなる。電動化車両の多くがそうであるように車体を構成する部品点数が少なく、発進停止を繰り返す路線バスの運行スタイルであっても電動モーターによる回生ブレーキが働くので、消耗部品の点数が少ない。このほか、ディーゼルエンジンは内燃機関なので油脂類やそれに伴う部品の定期交換が不可欠で、狭い車体後部に収められたエンジンの点検整備には時間もかかる。その点、FCバスは点検箇所こそ同じだが電動モーター駆動だから手間が少ない。

活躍する燃料電池バス(筆者撮影)

水素価格は2050年に5分の1へ?

さらに肝心の水素価格はこの先、安価になるという。経済産業省では2030年までに水素の単価を現在の3分の1に、2050年までには5分の1にまで引き下げる計画がある。残念ながら2050年をわが目で確認できるかどうかわからないが、実現すれば温室効果ガスの削減と低コストでの移動が同時にかなう。皮算用が多く現時点では手放しで喜べないものの、運輸・運送業で大切なトータルコストオーナーシップの観点からすれば、FCバスやFCトラックの将来は明るい。

最後に、新型MIRAIの燃費性能はどうか? 筆者の試乗では水素1kg当たり130km走ったので1km当たり9.3円。つまりMIRAIのランニングコストはハイオクガソリン(156円/L)を使用して1L当たり16.8km走るICE車両と同一の計算になる。ただし、MIRAIは走行時にCO2を一切排出しない(ICE車両の場合は138.1 g-CO2/km排出する)。

新型MIRAIの燃費数値(筆者撮影)

電動化車両を普及させる目的は温室効果ガスの削減にある。そのためには各種の電動化車両とともに、ICEとの連動が必要だ。さらに電動化の1つであるFCVは、搭載する燃料電池システムを乗用車以外に転用可能で、システムそのものを他業種で活用させることや、家庭でのコージェネシステムとしても機能させることができるマルチプレーヤーだ。

しかしながら、水素社会には多様性があるものの導入&ランニングコストは依然として高く、国と地域を選ぶ。ここは大きな課題だ。でも、だからこそ次世代エネルギー源の1つとして取り組むトヨタの活動には夢があると思う。試乗を通じ、新型MIRAIの目指す未来は乗り物の枠を超えた電動化社会の実現であることがわかった。

西村 直人 交通コメンテーター

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にしむら なおと / Naoto Nishimura

1972年1月東京都生まれ。WRカーやF1、さらには2輪界のF1と言われるMotoGPマシンでのサーキット走行をこなしつつ、4&2輪の草レースにも精力的に参戦中。また、大型トラックやバス、トレーラーの公道試乗も積極的に行うほか、ハイブリッド路線バスやハイブリッド電車など、物流や環境に関する取材を多数担当。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)理事。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。(財)全日本交通安全協会 東京二輪車安全運転推進委員会 指導員。(協)日本イラストレーション協会(JILLA)監事。★Facebook「交通コメンテーター西村直人の日々

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