ミクシィ朝倉氏が描く「次のキャリア」とは? 2020年東京五輪への出場にも照準

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塩野 経験したあとでは腹落ち具合が全然違いますよね。

朝倉 これは僕の感覚で、すべての会社に当てはまるかどうかはわからないけれど、ミクシィの立て直しに必要だったのは、ロジックや戦略などの「理」と、やると決めたことをやり抜く「心」の強さ、そして「運」という3つの要素だったと思います。この「理」と「心」と「運」が、最終的な成果にどれくらいの比率で影響しているか、自分なりに考えてみると、1対4対5くらいなんです。つまり「理」が1、「心」が4、「運」が5。

そういう意味でいうと、結果って半分運なんですよ。でも運任せかというとそんなことはなくて、前半の「理」と「心」を尽くしたところに、後半の「運」が着いてくる。

大きな戦略とか方向性を示すのは、実はそれほど難しくない。それはミクシィの場合、収益性を改善すること、事業を複線化することでした。ただそれに着手しようとした瞬間、たとえ総論賛成であっても、各論の反発が来る。ましてや僕が方向性を打ち出したときは、反発でさえなかった。反対以前に、ポカーンという感じ。「株式会社ミクシィは、SNSのミクシィを運営する会社でしょ。なんでSNSの会社がソーシャルと関係ない事業をやるの」という感じでした。

そういう中で「理」を貫くには、「心」がそうとうタフでないといけない。そして「運」の5割というのは、「理」の1と「心」の4をある程度ちゃんとやりきれていないと、降ってこないと思うんですよ。

昔は「戦略が大事」と思っていたけれど、「理」は全体の10分の1にすぎない。こういう感覚を得ましたね。

もともとリスキーな決断をできるキャラ

塩野 学校秀才クンは、100%の準備ができないと走り出せないじゃないですか。でも状況はどんどん変わるので、60%くらい詰めたら、リーダーとしては自信をもって「こっちの方向だ」と言ってブレずに進まないといけない。神様じゃないんだから、どうせ先のことはわからないんだから。それができるかできないかが、学校秀才クンとリーダーを分けると思うんですよ。朝倉さんはそれが昔からできたんですか。

中学を卒業してすぐ、競馬のジョッキーになろうとオーストラリアの騎手養成学校に進むくらいだから、学校秀才とは決断の仕方が違いますよね。

朝倉 多分もともとは、リスキーな決断ができるキャラクターだったと思うんですよ。

塩野 なるほど。元々ですか?

朝倉 それが東大や経営コンサルティングの会社に身を置いたことによって、退化してしまったのだと思います。僕はもともと高校も出ていないので、東京大学の文科一類に入ったときは、開成や灘から来た人たちのなかで、めちゃくちゃ浮いていました。でも入学して半年後の10月には安定について考えている自分がいたりして、「なんてことだ」と愕然としたのを覚えていますね。

塩野 環境が及ぼす影響って恐ろしいですね。いまはどうですか。

朝倉 これから何をするかも決めていないので、また昔の自分に戻った感じですね。

塩野 朝倉さんはいま何歳でしたっけ。

朝倉31です。

塩野 本当に次のことを決めていないんですか。

朝倉 全然わからないですね。でもそれはポジティブなことだと思っています。半分冗談ですけど、以前何かのアンケートで「5年後、10年後に何をやっていますか」と聞かれたとき、”Something beyond my imagination”と書いたことがあります。つまり未来の自分は、今の自分には想像できないくらいでありたい。いま想像がつくようなことなんて、つまらないじゃないですか。とはいえ直近の関心事としては二つくらいあります。

塩野 朝倉さんの目下の関心がどこにあるのか。詳しくは後編でお聞きしたいと思います。

(構成:長山清子、撮影:尾形文繁)

塩野 誠 経営共創基盤(IGPI)共同経営者/マネージングディレクター JBIC IG Partners 代表取締役 CIO

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しおの まこと / Makoto Shiono

国内外の企業への戦略コンサルティング、M&Aアドバイザリー業務に従事。各国でのデジタルテクノロジーと政府の動向について調査し、欧州、ロシアで企業投資を行う。著書に『デジタルテクノロジーと国際政治の力学』(NewsPicksパブリッシング)、『世界で活躍する人は、どんな戦略思考をしているのか?』(KADOKAWA)等、多数。

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