塩野 でもIT企業の若手経営者の言い分を聞くと、メディアの取材を積極的に受けるのは、自社サービスの宣伝になるからだと言いますよ。しかも広告費用がかからない。
朝倉 起業したばかりのスタートアップ時であればいいと思いますよ。でもミクシィはすでにそのステージは過ぎていました。僕が露出することによって、一人でもユーザーが増えるかというと、別に増えませんから。
塩野 言い切りましたね。
目立ってもいいことは何もない
朝倉 ネットバブル華やかなりしころからご活躍なさっている先輩経営者の方々からは、「最近の若い経営者連中は草食系だ」と言われますが、みんな意図的に露出を控えているんですよ。目立ったところでいいことは何もないと、さんざん学んでしまったので。
塩野 いったい誰のせいでしょうね(笑)。まあ、社長が目立つことのマイナス面も確かにあります。その経営者のカラーで企業イメージが固定されてしまうし、事業の本質以外のところで批判を受けることも多い。
ところで朝倉さんは、創業者ではないのに上場インターネット企業のトップに就かれたという珍しいパターンですが、創業者という威光が使えないなか、苦労したことや気をつけたことはありますか。
朝倉 自分をいかにオーソライズさせるかということですね。創業者とちゃんと一枚岩でやっているよ、ということは社内外に示さなければいけない。
ミクシィはこのままではダメだというコンセンサスが内部にあったので、社長交代のタイミングとしてはよかったと思います。
ミクシィは必ずしもゆでガエルではないんですよね。中で働いているメンバーは、ユーザーとしては新しいもの好きの超イノベーター層だし、危機感を持っている。ただどうすればいいかよくわからない。
第1四半期の赤字も、当然出そうと思って出したわけじゃないけれど、出た以上は社内には隠し立てすることなく、発奮材料にしようと思っていました。そうした厳しい現実を真正面から受け止められない人には辛かっただろうけれど。
塩野 そして今回トップを退任されたわけですが、朝倉さん個人としての学びは何かありましたか。
朝倉 そうですね……。多々ありました。本当にたくさんありました。変な言い方ですが、こういう経験をさせていただいたことはたいへんありがたいと思っています。ドラッカーを読むと、以前より全然腹に落ちる、みたいなこともあります。
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