マイクロソフトの販促物がムダに豪華な理由 広告宣伝と「コストリー・シグナリング理論」

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無駄で非効率と思われることが、コミュニケ-ションを効果的にすることもあります(写真: helen89/iStock)
私たちは、問題解決はロジックによって導かれると考えている。そのために、データやアルゴリズムを利用して、市場調査をしたり、コストカットをしたり、ビジネスモデルを組み立てたりすることが大流行である。
しかし、現実世界では、どうみても不合理な解決策によって成功した事例に事欠かない。私たちはロジックを重視するあまりに、ビジネスや政策立案において、より効果的な解決策を見失っていないだろうか?
今回、世界的な広告会社オグルヴィUKの副会長が、人々の心理に働きかけ、行動を変えるさまざまな「魔法」について書いた『欲望の錬金術』から、一部を抜粋・編集してお届けする。

合理的で凡庸な伝え方では何も伝わらない

20年前、私と同僚は小規模だが重要な宣伝広告に取り組んでいた。任務は数千人のIT部門の上級職に手紙を出し、一般公開されるのに先立って、マイクロソフト・ウィンドウズNT32ビットのサーバソフトウェアを試しに使ってみてほしいと依頼することだった。

『欲望の錬金術』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

単に手紙を普通郵便で送り、その製品がどんなもので、何を提供する予定かを伝えることもできた――その方法でも情報は伝わっただろうが、それではたいした意味を持たない。

そうする代わりに、われわれは無料のマウスパッドやペンといった細々した物を詰め合わせた、過剰なほど高価な包みを苦心して用意した。

そんなことをしたのは、そのソフトウェアの存在を伝えるだけでなく、非常に意味のある新製品で、マイクロソフト社が多額の費用をかけたと伝えるためでもあった。さらに、そんなソフトウェアを無料で試せる特権的な地位にいる人がごく少ないことも伝える必要があったのだ。

手紙で述べてもよかったが、それだと何の意味もないだろう。いわゆる「チープトーク」(訳注・コストをかけないが、相手の行動にも影響を与えない情報伝達のこと)と呼ばれる、何かを売ろうとしている誰もが話すことのできるものにすぎない――ただの主張であって、何かを証明するものではないのだ。

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