船橋:自ら国際会議やイベントを主催して、海外から、これはという人々を招く側になれば、準備の過程から、各プレーヤーの本音がわかって、それぞれの国の利害や関心を掴むことができます。それぞれのプレーヤーが持つ最先端のアイデアや構想や論考や仮説も事前に入ってきますから、それらをうまく引き出して、自分のため、そして世界のために活かすこともできる。
それこそが主催者冥利というものです。このような主宰力を“convening power”と言いますが、日本はグローバル化の中でその力を失っていきました。もう一度、その主宰力を再構築するときだと考えています。
日本の「勝ちすじ」
須賀:そういった意味では、今後の日本の「勝ちすじ」、「生き残り戦略」は何になるのでしょうか。
船橋:中国にはできないが、日本ではできることは何だろうかと、中国との差異について徹底的に考え抜くことが日本の戦略だと思います。例えば、アジア初のグローバル・メディアを作ろうとした場合、中国にはできませんよね。中国共産党が放っておかない。必ず、彼らの検閲を受けることになるでしょう。しかし、日本ならできる。少なくとも、日本は民主主義国家ですし、国際社会から信頼されていると思います。
グローバル・シンクタンクに関してもそうでしょう。民間の独立したシンクタンクは中国ではできない。シンクタンクにも、政府系シンクタンクや企業のシンクタンクなどいろいろありますが、やはり、民間の独立したシンクタンクが世界的には尊重されます。中国で、民間の独立したシンクタンクというのは、ちょっと無理ですよね。だからこそ、そういった強みをもっと引き出して、日本発のグローバルな価値をつくっていくことができると思います。
須賀:価値を出せるポイントはあるはずですよね。
船橋:その際、インドと組んで一緒にやる、といった発想を持ってもいいですよね。インドと一緒に、そして、アジアと一緒に、新たなフロンティアを開拓していこうという岡倉天心の夢のようなものでしょうか。そういえば、岡倉天心は『茶の本』の中で日本の魅力の1つは、”beautiful foolishness of things(遊び心)”といっています。消費と文化と人生における遊び心です。AIとアルゴリズムとロボットの時代では、これも日本の「勝ちすじ」かもしれません。ガラパゴス・フールですね。言い方を変えれば、日本の強みは、実はロング・テールにある、そこでの遊び心と創意工夫。モノづくりで発揮された日本の強みである“the real thing(ホンモノ・こだわり・職人芸)”とともに、こちらにも期待したいところです。
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