コロナ禍の日本に見えた国や人の大いなる難題 船橋洋一さんが語る「日本の勝ちすじ」

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船橋:課題先進国という言葉がはやったことがありますが、確かに先進的に課題に直面したがいつまで経っても解決のほうが追いつかない、解決後進国になってしまっています。グローバル化と技術革新の大波に乗ることにも臆病でした。他方で、中国は、グローバル化とデジタル化の波をトコトン利用し、これだけの成長を成し遂げた。それが2001年にWTOに加盟してからの20年の“大躍進”を遂げることができた最大の要因でしょう。

須賀:そうですね。

船橋:今回のコロナウイルスのパンデミックによって、「Zoom」をはじめとするオンライン・コミュニケーションが、働き方も学び方も根本的に変える新たなグローバル・コミュニケーション革命が到来したのではないかと私は思っています。ビジネス、大学、メディア、弁護士、NGO、芸術家、スポーツなど、すべてのセクターにおいて、自分が所属する国や地域や組織といった垣根を超え、それぞれが個々につながる無数の「有志連合」がグローバルに生まれています。

そのようなループに、日本人が参画できているのかどうか。ネットが生まれてグローバルに起こったコミュニケーション革命に日本が乗り遅れたように、日本は下手をすると、ここでまた、大きく遅れを取ってしまうのではないかと不安です。

(撮影:間部 百合)

日本が国際会議を主催できなくなっている

須賀:まさに、そのようなインナーサークルに入ることができる人と、できない人たちの間で、大きな差が開いていることを強く感じます。船橋さんは、そういったインナーのサークルに入って、最先端の情報をつねに収集されているからこそ、必要なアクションをすばやく判断して、適切な打ち手を打つことができているのだと思います。

今回の「グローバル・テクノロジー・ガバナンス・サミット(GTGS)」に関しても、世界経済フォーラムが、第四次産業革命をテーマにした、第一級の国際会議を作ろうとしているという情報が入った瞬間に、「その会議を日本に持ってきましょう」と船橋さんが根回しをされ、猛スピードで実現までこぎ着けられました。本当に大胆でいらっしゃるし、船橋さんの瞬発力のすさまじさには、心の底から驚かされました。

船橋:グローバル化の中で、日本が沈んでしまったことを表す例はたくさんありますが、こういった大きな国際会議を主催できなくなっていることも、1つの例だと思います。自分たちの側から声を掛けて、こんな面白いアイデアがある、こんな面白い人たちがいると、そうやって国際社会を引っ張っていく力が、日本からはどんどん失われていきました。アジアでの国際会議の舞台は、上海や香港、シンガポールなどに移り、日本は、お客さんとして各国に出向いていくような形が常態化しています。招待されて初めて、自分たちの主張ができる。それだけでは寂しい。

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