須賀:世界経済フォーラムの日本センターで活動する中でも、国際社会からの日本に対する信頼を強く感じます。自分たちの主張を額面どおりに信頼して聞いてもらえるということは、大きな信頼がなければ不可能なことなのだと、他国のセンターの活動を横目に見ても気づかされます。こういった信頼を自分たちの価値に変えていかなれば、もったいないですよね。
船橋:はい。これだけいいものを持っているし、すばらしい人々がいるのに、本当にもったいないです。ASEANの国々の最近の調査を見ても、日本に対する安心感や信頼感は確固としています。先日も、あるウェビナーで、シンガポールの外交官が話していましたが、バイデン政権に替わって、これからアメリカにアジアへ戻ってきてもらいたい中で、ASEANが最も信頼できるパートナーは日本で、もう1つはオーストラリアだ、この2カ国しかないんだと言っていました。
日本にはもっと国際舞台でリーダーシップを発揮してほしいと期待されているんです。アメリカと中国が対立の度合いを強める中で、日本がその両国と安定した関係を築き、アジアの平和と安定に寄与することができるかどうか、そのような役割を担う歴史的な機会でもある。そのために影響力を発揮する必要があると思います。
須賀:なるほど。
影響力発揮のために効果的なのは「与える」こと
船橋:影響力を発揮するために最も効果的なのは、「与える」ことです。フランスの歴史家、フェルナン・ブローデルが文明の盛衰と交差について記した古典の中で述べたように「与えるものが、優勢になる」のです。日本が与えることができるものはいろいろあると思いますが、例えば日本の2000兆円の個人金融資産もその1つでしょう。それをもっとうまく運用することを考えるべきです。
それも自分たちだけで運用しようとするのではなく、アジアのほかの国と協力して運用していくことも考えられます。インドネシアでは、これから「ソブリン・ウェルス・ファンド」をつくるということで、ルフット投資担当調整大臣が日本に声をかけてくれています。おそらく、インドネシアは中国には声を掛けないと思います。チャイナマネーへの信頼はまだ低いからです。
今の日本は、そのような国際社会からの「信頼」や「期待」を自分たちの価値に変えていくことのできる局面にいるのです。だからこそ、「日本特殊論」――つまりはガラパゴス・フールです――に閉じこもるのではなく、グローバルの文脈を読み込んで、持てるヒトとモノとコトを世界と共有し、知的公共財を世界と共に築き、それによって日本の可能性をさらに引き出し、日本のフロンティアを拓くことが大切だと思います。
須賀:だからこそ、日本の現状に悲観しすぎてはならないということですよね。船橋さんには、これからも日本の「勝ちすじ」に向けて、日本をリードしていただきたいです。本日はありがとうございました。
(制作協力:黒鳥社)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら