柏崎刈羽原発のテロ対策欠陥を生んだ背景事情 秘密主義がモラル低下に、安全審査でも甘さ
──東電の小早川智明社長は福島第一原発事故後、10年にわたって安全対策の強化や社内風土の改革に全力で取り組んできたと説明しています。そして、今回の事態について「痛恨の極み」だと述べています。
テロ対策などの核セキュリティー分野は、その実態を公表すればテロリストを利することにつながるという理由で秘密にされてきた。原発は原子力基本法などに基づいて公開性や透明性をうたっているが、核セキュリティーの分野は秘密性が強く、法の理念と相反している。
秘密性が保証されていることにより不祥事を隠蔽することも容易であり、そのことがモラルの低下を招いている。今回、立て続けに発覚した不祥事は典型的なケースだろう。核セキュリティー分野だから秘密にしていいという考えや仕組みを、いま一度見直す必要がある。
──東電によると、2020年3月以降、検知装置16カ所で故障があり、うち10カ所では代替措置が不十分な状態が30日以上経過していました。
どのような設備か明らかにされていないが、これだけ故障が多いと外部からの侵入検知のアラームが鳴ったとしても、侵入があったのか故障だったのかの区別がつかなくなる。同じような機能の設備で多重化するか、あるいは原理の異なるもので検知機能を多様化するといった抜本的な対策が必要ではないか。
原子力規制委員会も反省すべき
──今回の不祥事は、原子力規制庁による抜き打ち検査で見つかりました。更田豊志・原子力規制委員長は、2020年4月に始まった新検査制度による成果だと説明しています。
今回、たまたま見つかったからそう説明するのだろう。だが、実態はお寒い。
軽微な故障については代替措置を講じていれば、その詳細を報告しなくてもいいとするルールを東電が採用していたことにより、原子力規制庁も最近になるまで実態を把握できていなかった。東電社内でも核セキュリティーに関しては現場任せになっており、所長など上層部への報告も形骸化していた。
原子力規制庁も実態を確かめることなく、代替措置が講じられているという東電の説明を信用してしまっていた。両者とも反省すべき点は多い。最近まで問題に気づかなかったのは、形式だけを見ていたからではなかろうか。
──柏崎刈羽原発は、原子炉設置変更許可や工事計画認可など再稼働の前提条件となる安全審査が一通り終了しており、6月にも営業運転する予定でした。
原子力規制委員会は2017年に当時の田中俊一委員長による主導で実施した適格性審査の総括で、東電がほかの電力会社よりも安全問題への取り組みに積極的であると賛辞を述べたうえで「適格」と評定している。
しかし、一連の問題の発覚により、原子力規制委員会の審査が表層的であり、実態を把握できていなかったことが明らかになった。相次ぐ不祥事の発覚により、東電に原発を動かす技術的能力が欠如していることが明らかになった以上、一連の審査は白紙に戻し、再審査すべきだろう。
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