仕事の超基本「お客の声を聞く」の正しい考え方 意外と知らない鉄則「お客の声は2段階で聞け」

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消費財企業に勤めていたとき、イギリス人の上司と中国人の同僚と3人で「ホームビジット」したことがあります。

シャンプーやボディーソープなどの日用品は、書籍や家電、ファッションなどと比べても、eコマースで購入されることが少ないカテゴリーでした。日用品のeコマースをもっと一般的にするにはどうすればいいか、というのは、世界中の支社が共通して抱える課題でした。

ホームビジットで訪れた顧客のお部屋には、飲み終わったワインのボトルがフォトフレームと並んで戸棚の上に飾られていました。聞くと、スーパーで買い物をしているときに、お子さんがエチケット(ラベル)を気に入って買ったものなのだ、ということでした。

食品や日用品をスーパーで買う、という日常的なシーンには、そのような楽しさがあります。場合によっては、そんな毎日の買い物のワンシーンが、忘れられない思い出になることだってあるのです。

重くてかさばる日用品は、ブランドを信頼していれば現物をチェックする必要もなく、本来eコマースととても相性がいいはずです。にもかかわらず、日本のみならず世界中で日用品のeコマース比率が低い理由を、ここに垣間見た気がしました。

つまり、スーパーで日用品を買うのは、「不便だけど楽しい」のです。そして、その不便さは顧客の中で習慣化され当たり前になっており、不便だという自覚も薄い。反面、eコマースは便利だけど楽しさがなく、eコマースでの買い物が思い出に残る、なんてことはありえません。もしかしたらここに、日用品の買い物がなかなかeコマース化しない、根本的な理由があるのかもしれません。

この体験から私は、eコマースで日用品を買う体験をどうにか「楽しく」できないか、と考えはじめました。

そして、「1年中買うことができる福袋」という着想を得ました。新商品が出るなどして在庫の回転率が悪くなった、でも質は高く顧客の評判も良い商品を、「福袋」としてeコマースの販路でまとめて割引販売する、というアイデアです。

そのような商品は、スーパーやドラッグストアなどではスペースを取るので売り出しにくいですが、eコマースなら問題ありません。むしろ、単価が安い消費財のeコマースは送料の負担がネックになりがちですが、このような「まとめ売り」なら送料無料のバーをクリアしやすいという利点もあります。

この企画はeコマースを運営するある小売企業さんに採用されてヒット企画となり、以後定番の販売手法として定着しました。このヒット企画の出発点は、「1人の顧客の真実」だったのです。

「顧客の声」から生まれた仮説は必ず「検証」する

もちろん、このような顧客の真実は、単にその人1人の真実であるにすぎません。実務ではそれを1つの「仮説」として、アンケートなどの定量調査で正しいかどうか検証していきます

「1人の顧客の真実」は、あくまで「出発点」です。それがすべてではありません。たった1人の意見に流されて、多くの人の意に反することをするのは明らかに誤りです。

一方、1人の真実を「出発点」として、それが多くの人にとっての真実であると確認しながら進めていくことで、まだ誰にも発見されていない重要な真実を見つけることができるのです。

次ページ「1人の顧客の真実から始める」はあらゆる企画に応用可能
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