筆者の事務所の近所でのこと。ある個人経営の理容店がある日、店の前に立て看板を出した。
「当店なら、シャンプー付きで1000円」。
1ブロック先にあるQBハウスへの対抗策だが、シャンプーまでして10分は無理だ。客が全く取れないよりはいいだろうと覚悟を決めての「値下げ」であろう。
しばらくすると、看板には新メニューが加わった。「総合整髪コース1500円」。つまり、ひげそりからセットまでの、従来のフルパッケージで4000円程度で提供していたものを半額以下に値引きしたことになる。確かに自宅兼用の店舗で家賃不要なら何とかやっていけるだろうが、売り上げは激減のはずだ。値下げのデフレスパイラルに自ら飛び込んだ形になる。何とか、もっとうまい方法はなかったのか。
毛がなければ商売にならない業界で「不毛な争い」はやめて、その「10分1000円の法則」をもっと有効活用してみてはどうかと思う。
美容業界の方に伺ったところ、美容業界は「1分100円の法則」だという。要するに同じだ。そこで、気になる記事を見かけた。
■デフレを防ぐ小さなニーズを拾う努力
「前髪だけカットするために、美容院に行く?」(2010年4月13日 Excite Bit コネタ)
おでこむき出しのボブヘアであるという、ライターの田辺香氏が、わざわざ美容院まで前髪だけを切りにいくという知人の話を聞いて、まさか! と驚いたとある。
その知人の美容室は、前髪のみのカット料金は525円。通常のカットが約4000円なので、妥当な価格かもとしている。1分100円なら、前髪カットは5分。フルサービスは40分で4000円なのだろう。筆者の行きつけのサロンは前髪カットは1050円らしい。フルサービスのカット料金は7350円。10分と70分。まぁ、そんな感じだ。だとすれば、「法則」は正しいことになる。
しかし、上記の記事では田辺氏行きつけの美容室の談では「前髪だけを切りにくる人は、たしかに定期的にいますね」という。ただし、10年前くらいから、その割合は減ってきているそうで、近年では「月に一人いるか、いないか」だとかという状況らしい。
それって、恐ろしくもったいないことに感じてしまう。
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