日本のPTA、やっぱり変です 教育の現場で見た、思考停止と性差別

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思想信条の自由はありますから、ご当人がそう考えることまでは否定しません。ですが、教育長という公的立場からそれを他者に求めることは、男女共同参画社会基本法の理念に根本的に反しており、論外です。これが「教育、学術及び文化に関し識見を有する」人の発言でしょうか? これでは、聴衆にも少なからずいたであろう、不本意ながら性役割分業規範に縛られている女性を追い詰めることになるはずです。

そしてそれはコインの裏側で、男性を長時間労働の職場に縛りつけることと結び付きます。私は大した研究者ではないので、意識して、仕事と夕食づくりを両立できるような働き方をしています。職場での評価は低いでしょうが、家事育児にきちんとかかわることは、私にとってはそれ以上に重要なことです。そうした家事にかかわろうとする男性の存在さえも、否定するような発言なのです。

失態を公にしたがらない?

さらに、PTAの全構成員を潜在的対象とする講演会である以上、きちんと全構成員に訂正と反省を伝えてほしいとお願いしたのですが、「PTA役員会等を通して経緯を説明し、訂正したい」とのこと。なるべく失態を公にはしたくないのでしょう。この手の問題を隠蔽しようとすると、最終的により手のつけられない問題になることは、昨今の失言・暴言のその後の顛末を見ればわかると思うのですが……。

「この件を契機に、渋谷区および教育委員会として反省しつつ、研修などを通じ、男女共同参画行政の推進に努めたい」と付言して事態を説明してくだされば、それで済むことなのに。このバトル、今も「現在進行形」です。

きっと区役所・教育委員会にとっては、私は単なる「モンスターペアレント」なのでしょう。私はこの深刻な人権問題を告発することを通じて、行政や教育委員会のジェンダーに関する意識を改めてほしいと願うだけなのですが。PTAの異常な男女比は、こうした問題を不可視化する大きな原因のひとつのように思われます。

これがまさに、世界の男女間格差で136カ国中105位の日本の実態です(世界経済フォーラムの発表より)。その名も「ガラケー」と呼ばれる携帯電話と同じように、ガラパゴスしか知らない人たちが、ガラパゴス流を通すので、世界では通用せず、そしてそのガラパゴスが、このままだとやがて絶滅することに気がついていない。

ぬるま湯につかるカエルと同じです。ゆであがって気がついたら死んでいる……。私が変人だからそう思うのでしょうが、日本の学校、やっぱり変です。それでも皆さんは、この環境が心地よいと思われますか?

編集部注:本件について、渋谷区教育委員会にコメントを求めましたが、「コメントはありません」との回答でした。
瀬地山 角 東京大学教授

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せちやま かく

1963年生まれ、奈良県出身。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、学術博士。北海道大学文学部助手などを経て、2008年より現職。専門はジェンダー論、主な著書に『お笑いジェンダー論』『東アジアの家父長制』(いずれも勁草書房)など。

「イクメン」という言葉などない頃から、職場の保育所に子ども2人を送り迎えし、夕食の支度も担当。専門は男女の社会的性差や差別を扱うジェンダー論という分野で、研究と実践の両立を標榜している。アメリカでは父娘家庭も経験した。

大学で開く講義は履修者が400人を超える人気講義。大学だけでなく、北海道から沖縄まで「子道具」を連れて講演をする「口から出稼ぎ」も仕事の一部。爆笑の起きる講演で人気がある。 
 

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