高級菓子「たねや」が存亡危機を切り抜けた訳 コロナを革新と捉えた老舗の大胆な発想転換
三神:今まで老舗ブランドとして百貨店のみで売られていたお菓子が、コンビニやスーパーの棚に並ぶことに葛藤はありませんでしたか?
山本:「店が閉まっていてお菓子を買えない」というお客さまからの声を聞き、私たちは今、必要とされていると感じました。ブランドがどうこうではなく、お客さまに食べていただき「おいしい」と言っていただくことに焦点を当て、百貨店以外の販売方法でも、絶対に味を落とさないということを死守しました。
三神:コンビニやスーパーの商品の売り方は、百貨店とは大きく異なります。パッケージや売る個数も違うと思いますが、店舗数が多いことで管理が雑多になる可能性もあります。
山本:私たちのお菓子は非常にデリケートであることを説明し、ご理解いただいたうえで取り扱っていただきました。私たちが作れる最大限のお菓子の数を毎日お届けするということができ、多くの方にわれわれのお菓子を食べてもらうことができました。
三神:新規顧客の開拓につながりましたか。
山本:今までは年齢の高いお客さまが多かったのですが、若い方まで来ていただくようになりました。お菓子離れが進んでいる中で、新しいところで展開すればまた新しいお客さまを獲得できると感じました。
コロナによりネット販売が加速
三神:インターネット通販にも本格的に取り組まれたそうですね。
山本:通販は昔からやっていましたが、お客さまは年配の方が多く、ネットではなく電話注文やファクス注文で受けていました。われわれもネット通販の必要性を20年も前から考えてはいましたが、お店のほうがよく売れるため、手つかずのままでした。コロナをきっかけにネット通販に着手でき、一気に加速しました。
三神:ネット通販では、店舗で行うお客さまに喜んでもらうためのリアルな仕掛けや接客ができません。この点はどのように補いましたか。
山本:できる限りお店も通販もサービスは変わらないように、細やかなサービスを映像にして文章にしています。150年続けてきた販売方法に加えて、迅速な対応ができるという通販の利点も生かしながら行っています。まだ、それが成功したわけではないですが、試行錯誤して改善を重ねながら進めている状況です。