「半導体パニック」自動車産業に与える巨大衝撃 産業ピラミッドの王者を主従逆転する序章か
現在、自動車にとって半導体のコストは決して高いものではない。鉄の塊である車体や駆動系部品、タイヤなど多くの部品から構成されることから、必ずしも半導体は自動車の主役ではなかった。
だが、先端技術の進展に伴い自動車1台あたりの半導体搭載量が増えている。特に自動運転には先端半導体が必要で、10年後には金額ベースで半導体のコストが従来の10倍になるとの試算もある。自動車産業は今後、半導体のエコシステムの中でどのような地位を占めるかを本格的に見定める必要がある。
そもそも、半導体は自動車向けだけが不足しているわけではない。コロナ禍によるテレワーク拡大はパソコン需要だけでなく、世界中でやりとりされるデータ量の増大を背景としたデータセンター需要なども喚起した。家電をはじめとしたIoT(モノのインターネット)関連の需要も旺盛だ。
5年間で35%の市場拡大が見込まれる
イギリスの調査会社オムディアによると、2019年末に予想した今後5年間の半導体需要の伸びは年平均1%だったが、新型コロナ感染拡大後の見直しで年平均6%の伸びに上振れた。これは5年間で約35%市場が拡大するという急激な伸びだ。
半導体不足は今後の地殻変動への序章にすぎない。自動車業界は「100年に一度の大変革期」(トヨタの豊田章男社長)で、電動化や自動運転など「CASE」と呼ばれる波が押し寄せている。機械のすり合わせや製造技術で差別化することが難しくなり、ITやソフト、データが主流になる。それは「車のスマホ化」を意味する。そこでの主役を虎視眈々と狙うのがアメリカのアップルやグーグル、日本のソニーなど異業種だ。彼らが設計・開発したものを自動車メーカーが製造する主従逆転の可能性すらある。
今回の半導体パニックが製造業王者・自動車業界に突き付けた課題は重い。
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