藤井聡太二冠が語る「将棋とサッカー」の共通点 師匠・杉本八段と本音で語った将棋のあれこれ

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杉本:波がすごく小さいタイプかなとは思います。少なくとも、側で見ていて「今日は調子が悪そうだな」と感じることはほとんどないですね。

藤井:フフフ。

杉本:ひとつ聞きたいのが、1年前の王将リーグの挑戦がかかった最終の広瀬戦で、角換わりでなく矢倉を選択したときには驚いた。あのときの選択が、今年タイトルを獲得した渡辺さんとの棋聖戦で、矢倉を選ぶことにつながったのかな?

藤井:うーん、あまり大一番だとか、どの戦法を選択するとかは意識していませんね。

杉本:これはトップ棋士に共通することかもしれませんね。羽生さんもそうですし、大きい一番だから得意な形という発想ではいけないのかもしれない。でも、それができるのは棋士の中でも限られた人だと思います。

藤井二冠「普段から自然体でいることが大事」

――モチベーションを高めるために、どんなことを気にかけていますか?

杉本:新しい発見をすることですかね。棋士になってから何十年もたつと、毎日の生活や対局の気持ちがマンネリ化しやすくなる。新しい形に踏み込んだり、発見しようという気持ちが薄れがちになってしまう。そういう意味で、日々強引にでも理由をつけて自分の中で新しい発見をするようにしています。若い弟子たちと一緒に学ぶというのも、その1つでしょうか。

いまは20代、30代で弟子を取る棋士も増えましたけど、私が30代の頃はまだ少なかった。弟子を取ると自分のトーナメントを諦めたんだと思われがちな時代でした。初めて弟子を取ったときに、『これから普及に専念されるんですね』と言われて、心外でした(笑)。

藤井聡太(ふじい・そうた)/2002年愛知県瀬戸市出身。2012年9月6級で奨励会入会。杉本昌隆八段門下。2016年10月1日四段。2020年8月20日八段。史上最年少(14歳2カ月)で四段昇段を果たすと、そのまま新記録となる29連勝を達成。2020年7月第91期ヒューリック杯棋聖戦で渡辺明を下し、初タイトル獲得。17歳11カ月での戴冠は史上最年少記録。同年8月第61期王位戦で木村一基を下して二冠に。八段昇段。将棋大賞は2017年度に、特別賞・新人賞・最多対局賞・最多勝利賞・勝率一位賞・連勝賞・名局賞特別賞を受賞。将棋界のありとあらゆる記録を更新し続ける18歳。(写真:筆者撮影)

藤井:なるほど……(笑)。

杉本:でも、弟子がいてよかったなと思います。彼らの将棋を見ているだけで、自分の将棋が活性化されたり、自分の対局の中で武器になっていると感じるときがある。藤井二冠も40代後半になったら弟子を取ることを勧めますね。加えるならば、自分よりも才能のある弟子を。大変かもしれないけど。

藤井:フフフ。自分はモチベーションを維持するというのは、うーん……。あまり無理をしないことですかね。普段から自然体でいることがいちばん続けられますし、その中で新しい発見とかを大切にしていくのがいいのかなと。

――頑張りすぎてしまうと反動がきてしまうと?

藤井:自分の場合は、そうかもしれません。

――将棋以外の才能で、あったらいいなと思うものはありますか?

杉本:将棋の才能がもっと欲しいですけど(笑)。あと才能とは違いますけど、健康な身体と、メンタル面の強さは欲しいですね。やっぱり、いまでも負けるとダメージが大きいので。

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