藤井聡太二冠が語る「将棋とサッカー」の共通点 師匠・杉本八段と本音で語った将棋のあれこれ

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藤井:願ったらキリがないので、与えられたものでやっていくしかないです。

――将棋をスポーツに例えたらどんな競技でしょうか?

杉本:場面場面を切り取ったら野球のピッチャーとバッターの関係にすごく似ている。また、自分の思った手が指せる場面が少ないのは、テニスのストロークの打ち合いに似ているかなと。秒読みでたたき合うのはテニスの感じです。

藤井:どうしてテニスなんですか?

杉本:30秒で読める人と、読めない人では考え方が違う(笑)。こちらからすると、30秒でもボロが出る感覚なので。読んでいる暇がないというか、とっさの反応をしなければ自分の中で追いつかない。

将棋は全体的にはサッカーに近い

藤井:なるほど。自分はすごくスポーツが下手なんですよ。

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走るとか単純なものはできるんですけど、体育の授業でバドミントンをやったときはラケットに全然当たらなくて。将棋って瞬時の判断が要求される場面がスポーツに比べて圧倒的に少ないので、自分としてはありがたいと思っています。球技ではボールが来るまでにどう動くか判断しなければならない場面が多いですけど、将棋の場合はそういうことはないですね。将棋は初めて見る局面ほど、判断力がいちばん大切になります。全体的にはサッカーとかが近いと思いますけど、部分的な手筋は毎回違います。

杉本:藤井二冠は読めるから、そこでも駆け引きできている認識なのでしょうね。たくさんの駒があって配置を考えたりするのは、サッカーがすごく似ていると思う。ただ、対局者とか司令塔の考え方とかは違いますね。武道ともちょっと違うかな。

――藤井二冠はインタビューで「詰将棋解答能力は12歳くらいがピークだった」と答えていますが、どういうことでしょうか?

藤井:そのままの意味です。正確に測るのは難しいですけど、自分の感覚としてはそうだったのかなと。将棋の強さと、詰将棋を早く解けることはそこまで大きな相関関係があるわけではないので、単純に当時のほうがよく解いていたのが要因としては大きいと思います。

杉本:スポーツ選手の身体能力が、10代でピークを迎えるというのは珍しくないですよね。それは年を重ねることで補えるものとは違う。スピードだけを取ったときに、人間のピークがそこにあるのかもしれない。12、13歳はまだそこからたくさん学ぶ年だから、詰将棋に関してもそれから訓練して早くなる感覚がある。でも藤井二冠の場合は、その段階でもう自分の中でピークに達していたということでしょうね。

野澤 亘伸 カメラマン/『師弟~棋士たち魂の伝承』著者

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のざわ ひろのぶ / Hironobu Nozawa

1968年栃木県生まれ。上智大学法学部法律学校卒業。1993年より写真週刊誌『FLASH』の専属カメラマンとして活動を開始。主に事件報道、スポーツ、芸能などを取材、撮影。同誌の年間スクープ賞を3度受賞。フリーとしてタレント写真集や雑誌表紙を多数撮影。小学生の頃からの将棋ファンで、著書『師弟 棋士たち魂の伝承』(2018年、光文社)と『少年時代に交わした二つの約束』(2019年、将棋世界)で第31回将棋ペンクラブ大賞を受賞した。ほかに海外取材をまとめた『この世界を知るための大事な質問』(2020年、宝島社)などがある。

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