コロナ禍で3店閉店「世界の山ちゃん」次の一手 干物とおばんざいの新業態店「ひもの亭とと」

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これもまた見るからにおいしそう! 箸でほぐした身を口の中に入れてみる。脂ののったさばと甘辛くて香ばしい醤油の組み合わせは最高だ。口いっぱいに広がった旨みを一刻も早くご飯に吸収させたいという衝動に駆られて、思わずご飯をかき込む。もう、無限にご飯が食べられるのではないかというくらいご飯に合う。というか、ご飯そのものもかなりおいしい。

静岡県沼津市のヤマカ水産「正子さんのさば醤油干し」は、ご飯との相性が最高(筆者撮影)

聞いてみると、干物に合うご飯にも相当こだわったそうだ。素人の考えでは、新潟・魚沼産のコシヒカリがいちばん合うと早合点してしまうが、そうではないらしい。

「コシヒカリのように粘り気や甘みの強いお米は逆に干物と合わないんです。さまざまな銘柄を食べ比べました。結果、『まっしぐら』という青森県津軽産米にたどり着きました。粘り気と甘みがほどよく抑えられていて、干物がよりおいしく食べられます」

ありとあらゆる方策でコロナ禍を乗り越える

オープンしてから丸3カ月が経ったが、客の入りも上々のようだ。何よりも、金山駅周辺どころか、名古屋市内を見渡してもここまでクオリティの高い干物を食べさせてくれる店がほとんどないからだろう。客層は老若男女さまざま。中には1人で来店して食事やお酒を楽しむ女性の姿もあるという。

「1人で来られる女性のお客様は、ご飯のおかわりをされる方も多いですよ。グループだと、どうしても遠慮してしまいますからね。女性が1人で食事やお酒を楽しめる受け皿になることができればと思っています」(堺さん)

「ひもの亭とと」店内。奥にはカウンター席がある(筆者撮影)

魚介が苦手な人はともかく、店を訪れる客層からもわかるように、干物は受け入れられやすい。郊外やロードサイドで出店しても人気を博すだろうが、ショッピングモールのレストランフロアや地下街にあっても集客が見込めると思う。

「世界の山ちゃん」は、百貨店での催事に参加したり、スーパーなどの駐車場でキッチンカーを出店して「幻の手羽先」を販売している。さらには、テイクアウトやデリバリー、通販を強化している。

「ご家庭で調理する『幻の手羽先』もあります。以前は油で揚げなければなりませんでした。最近、電子レンジで温めるだけで食べられる商品を新たに開発しました。現在は関東の一部スーパーでの販売となっていますが、今後は販路を広げてまいります。とにかく、今はありとあらゆる方策を講じるしかありません」(堺さん)

名古屋を代表する居酒屋チェーンであり、「幻の手羽先」で名古屋めしのブームを牽引してきた「世界の山ちゃん」。筆者も同じ名古屋人として応援していきたい。

永谷 正樹 フードライター、フォトグラファー

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ながや まさき / Masaki Nagaya

名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。

地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに記事と写真を提供。

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