「カウンタックとボーラ」の似て非なる盛衰 半世紀前に生まれた2台のスーパーカーの雄

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アレッサンドロ・デ・トマソによる廉価モデル=「ビトゥルボ」路線への集中により、ボーラを起源とするマセラティ・ミッドマウントエンジン・モデルの系譜はしばらくの間、姿を消すこととなった。

しかし、幸いなことに両ブランドとも現在は輝きを取り戻し、スーパーカーのメインストリームに存在していることは、何より素晴らしいことだ。

ランボルギーニは、カウンタックのDNAをひたすら守り続けた。ガンディーニが描いたワンモーションのスタイリングと、ミッドマウントエンジンレイアウトというこだわりを守り続けている。そして、近年は硬派なSUVたる「LM」シリーズのDNAを「ウルス」で蘇生させ、年間生産台数は上り調子だ。

ランボルギーニ初のSUVモデル「ウルス」(写真:ランボルギーニ)

マセラティは、かつてのライバルであったフェラーリの下で、グラントゥーリズモ・メーカーの本質を追究し、「クアトロポルテ」という個性的なラグジュアリー・スポーツサルーンのDNAをこちらも蘇生させることに成功した。

フィアットからFCA、そしてステランティスを支えるラグジュアリーブランドとして、昨年から類を見ない大規模の投資が始まっており、久方ぶりのミッドマウントエンジン・スポーツカーである「MC20」は、グラントゥーリズモとしての特性を生かした、まさにボーラのDNAを引き継ぐ存在となった。

マセラティ「MC20」はV6ツインターボエンジンを縦置きにミッドマウントする(写真:マセラティ)

過酷な道を乗り越えてきたからこそ

このような2台の名車を取り巻く50年の歴史を俯瞰してみるなら、やはりスーパーカーメーカーというのは持ち前のDNAに対して、あるときは無謀といわれようともこだわり続けることが重要なのではないか、と感じる。その想いが、ブランドの存在価値を確固たるものにしてきたのだ。

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コロナ禍の下で、趣味性の高いラグジュアリーカーブランドは健闘しているともいえる。しかし、環境や安全に対する要求は日々高まっており、スーパーカーの未来は決して安泰であるともいえない。

だが、考えてみてほしい。両ブランドとも、これまでとんでもない過酷な道筋を歩んできたではないか。その中を生き延びてきた彼らであるから、これからもそう簡単にギブアップすることはないと私は確信するのだ。

越湖 信一 PRコンサルタント、EKKO PROJECT代表

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えっこ しんいち / Shinichi Ekko

イタリアのモデナ、トリノにおいて幅広い人脈を持つカー・ヒストリアン。前職であるレコード会社ディレクター時代には、世界各国のエンターテインメントビジネスにかかわりながら、ジャーナリスト、マセラティ・クラブ・オブ・ジャパン代表として自動車業界にかかわる。現在はビジネスコンサルタントおよびジャーナリスト活動の母体としてEKKO PROJECTを主宰。クラシックカー鑑定のオーソリティであるイタリアヒストリカセクレタ社の日本窓口も務める。著書に『Maserati Complete Guide』『Giorgetto Giugiaro 世紀のカーデザイナー』『フェラーリ・ランボルギーニ・マセラティ 伝説を生み出すブランディング』などがある。

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