日米同盟が試された3.11直後の知られざる実際 細野豪志氏×磯部晃一氏対談(後編)

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磯部:自衛隊のカウンターパートは、内容により在日アメリカ軍になることも、太平洋軍になることもあります。あわせて、統幕長はペンタゴン(アメリカ国防総省)のマレン統合参謀本部議長とも話していましたので、3人がカウンターパートになります。

太平洋艦隊は太平洋軍隷下の海軍の艦隊です。自衛隊がその下に入るというイメージは持っていませんでした。統幕長が一番関心を示されたのはアメリカに係る行政的な関係もウォルシュ太平洋艦隊司令官の下に入ることになると、行政もオペレーションも全部1人の司令官が握ることになるので、ちょっとこれは複雑なことになるのではないかなと。

細野:少し一般の日本人が理解しがたいと思うのは、アメリカにおける軍のステータスです。四つ星の大将の、社会における位置付けは極めて高いですよね。

あくまでもジョイント・サポート・フォース

磯部:イラク戦争後にイラクに駐留したアメリカ軍の軍司令官となると、行政も治安も全部握りますから。まさに軍事政権みたいなものです。しかしながら、アメリカ軍もそこのところは日本の状況をよく理解していて、結局そのアメリカ軍統合部隊の名前も、「ジョイント・サポート・フォース」と言って、アメリカ側はあくまでも日本のサポートに徹するんだという意味の名前を付けたので、ある意味ほっとしたということです。

細野:ジョイント・サポート・フォースだからJSF司令部か。折木良一統合幕僚長は相当の覚悟を持ってアメリカ側に問うたわけですね、どういうことなんだと。

磯部:太平洋軍の司令官であるウィラード太平洋軍司令官が20日に日本に来るんですけれども、その時に折木統幕長が確認されたんです。ウォルシュ大将は軍事以外の行政も担うのかという質問をして、ウィラード氏は明確に、いやそういう権限は持たないと。それで、折木統幕長も安堵された。

細野:数日後に日米の合同調整会議にも、ウォルシュ太平洋艦隊司令官が一度来られた。あのときの雰囲気をよく覚えています。太平洋艦隊司令官だから、これはすごい人が来たなと思って見ていたら、アメリカ側の国務省も、NRCのカストー氏も、DOEの担当者もこれまでとは違う雰囲気だった。日本側の受け止めも、すごいのが出てきたぞという感じでした。外務省や防衛省も含めて。私は、折木統幕長の懸念は完全な杞憂なのではなくて、そういう雰囲気が当時あったのではないかと思います。

磯部:統幕の中には、マッカーサー司令官の再登場かといった感覚を抱くものもいました。

細野:マッカーサーは軍人だった訳ですもんね。それがGHQのトップになった。

磯部:進駐軍の総大将ですから。

細野:そうならないようにわれわれも努力をしたし、当然防衛省も努力をしたのですが、やり方を間違えれば日本の独立が危うくなる、60年歴史が前に戻るみたいな危機感があったのかもしれませんね。

磯部:そうならなかったのがよかった。アメリカ軍、とくに太平洋軍や日本と付き合いのあるアメリカ軍の軍人は、ウィラード司令官も含めてそこはよくわかっていたと思います。

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