「外交と安全保障」に安倍内閣が残したレガシー 「安保法制」「戦後70年談話」「FOIP」という成果 

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さらに興味深いことに、安保法制成立から5年を経た今、反対論は著しく後退している。反対論の拠点であった朝日新聞の2020年12月18日の記事によれば、安保法制を支持する人は反対論を明白に上回っている。

ここで想起したいのは、トランプ大統領が繰り返し、「米兵が日本を守るために血を流して戦い、日本人はそれをソニーのテレビで見る。アンフェアーだ」と言っていたことである。このトランプ発言は、現在では誤りであって、日本の防衛のために行動している米軍が危険に遭遇したときは、日本はともに戦うことになっている。しかし、安保法制が成立するまでは、トランプ発言のとおりの状態だったのである。

事実として、安保法制成立以後、日本とアメリカの間では飛躍的に情報の共有が進んでいる。ともに危険を負担する間でなければ機微な情報を共有しないのは当然のことであって、安保法制はその意味でも大きかったのである。

PKOの現状とその他の課題

PKOの現状

しかし、憲法9条1項に関する懇談会提言を受け入れなかったように、安倍内閣の国際平和協力に対する姿勢は十分ではなかった。2016年、南スーダンのジュバで内戦が起こったあと、政府は、PKOに参加している他国の部隊や一般市民が襲撃を受けたときは、自衛隊が助けに行けるよう、「駆け付け警護」という世界に例のない法律を作った。

国連平和維持活動においては、そうした友軍支援や市民保護は、明文に規定していなくても、当然の義務であるが、自衛隊は法的根拠を必要とした。しかし、それから間もなく、南スーダンの自衛隊は引き上げてしまったのである。

その他の課題

ともあれ、PKOを別として、安倍内閣のもとで安全保障政策は強化された。それでも、中国の軍事的膨張は急速であり、尖閣諸島周辺での行動も一段と活発化しており、海上警察の組織や役割も変更して強化している。日本の安全保障がこれで十分であるとは到底言えない状況である。

その1つは、ミサイル防衛の不備である。2019年、陸上イージスの配備が中止されることとなった。それは、ミサイルからの落下物の安全が保障されていないという理由であったが、ミサイル防衛の限界を示したものだった。

中国はもとより、北朝鮮のミサイルが著しく発展した今、ミサイル防衛によって本当に日本の安全を守れるか、疑問である。しかも、性能や価格を十分吟味しないで購入を決定していた疑いが濃い。

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