「外交と安全保障」に安倍内閣が残したレガシー 「安保法制」「戦後70年談話」「FOIP」という成果 

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国家安全保障戦略:National Security Strategy

また2013年12月には、国家安全保障戦略の策定がなされた。日本の基本的な安全保障戦略を策定することは、対外的な安定性の点でも、国内の啓蒙、政策的統一のために、きわめて必要なものであるが、日本にはそれがなかった。

わずかに、1957年5月、岸内閣策定にかかる国防の基本方針があったが、かなり古く、また極めて簡潔なもので、政策指針としては十分ではなかった。戦前の日本でも、外交と軍部の対立は根深く、陸軍と海軍の対立も深刻だった。その意味で、外交と防衛をカバーする国家安全保障戦略の制定は、日本にとって画期的なものだった。

その中心は、自由で安定した国際秩序の維持が日本の基本的な国益であり、その維持強化のために、日本は積極的な役割を果たすべきだということであり、これを積極的平和主義と呼んだ。具体的には、自衛力の強化、日米安保の強化のみならず、国際平和活動、ODA(政府開発援助)、外交による平和構築にも、より積極的に取り組むべきだという内容だった。

これに対しても、一部から、政府は世界中に自衛隊を進出させようとしているという批判があったが、これらは、まったく事実無根であって、以下に述べるとおり、安倍内閣はPKOなどについてはきわめて慎重で、むしろ臆病なほどであった。

防衛装備品輸出三原則

2014年4月、国家安全保障戦略に基づいて、防衛装備品輸出三原則が定められた。元来、日本は武器の輸出を極めて厳格に制限していた。1970年代半ばまでは、共産主義国、国連で制裁を受けている国、紛争当事国には武器を輸出しないという方針だったが、1974年、三木内閣において、原則として武器は輸出しないという方針に転じた。

のち、1983年、中曽根内閣は方針を転換し、同盟国アメリカへの武器技術輸出は可能だとしたが、それ以外は依然として原則的に禁止だった。

もちろん、他国を侵略したり、国内で国民を弾圧したりするような国には、武器を輸出すべきではない。しかし世界には他国の脅威にさらされて防衛力を強化しようとしている国もある。そういう国々に対しては、日本は資金等の援助などをすることがある。

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