「外交と安全保障」に安倍内閣が残したレガシー 「安保法制」「戦後70年談話」「FOIP」という成果 

拡大
縮小

いずれにせよ、ミサイル防衛を中心とする防衛政策や、その基底にある専守防衛という原則自体が、不可能になりつつあるが、まだ有効な対処はなされていない。

2020年には新型コロナが世界を直撃した。日本の感染者は相対的に少なかったが、検査の数にせよ、病院の準備にせよ、ワクチンの開発にせよ、資金の給付にせよ、多くの欠陥が明らかになった。パンデミックは、いわゆる非伝統的安全保障と呼ばれるものの1つであるが、これにおいて日本の対応は失敗だった。有事において政府が強い権限を行使し、国民の安全と福祉を守るという仕組みが、根付いていないことが明らかになったのである。

歴史認識問題

次に、いわゆる歴史認識の問題に移りたい。これも、外交の大きな制約要因になりうるので、外交安全保障政策の一環だと考えるべきである。

安倍首相が2013年12月末に靖国神社を訪問すると、中国、韓国は激しくこれを批判し、同盟国のアメリカまで、失望したというコメントを発表した。

これは、同盟国としては、やや行きすぎた反応だったと思う。なぜなら、歴代の首相は、日本は侵略したことを認め、A級戦犯には責任があると述べ、しかし祖国のために生命をささげた一般兵士のために参拝すると言ってきた。今回も同様だった。これに対して中国や韓国が批判するのはそれなりの意図があってのことであり、ある程度は理解できるが、アメリカが批判するのは行きすぎだと私は考える。

しかし安倍は右翼だとする論調が欧米、とくにアメリカのリベラル系の学者に多かったことは事実である。

2014年にはマグロウヒル社の教科書に、「日本軍は14〜20歳の女性を、20万人も強制的に徴用し、……『慰安所』……で働かせた」と記されていることが判明し、日本の外務省が訂正を求めたところ、2015年5月、アメリカの学者グループはこれを歴史に対する検閲であるとして抗議書簡を発出した。

次ページ「慰安婦」のほとんどは成人、かつ朝鮮人が多数ではなかった
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT