成功の肝は忍耐、渋沢栄一に学ぶ「頭の下げ方」

大河ドラマ時代考証者が語る5つのポイント

――では続けて、渋沢を知るための5つ目の側面とは何でしょうか。

91歳まで生きたということです。91年にわたる生涯は、今の時代だって長生きと言われるのですから、幕末生まれの渋沢にとっては実に長い人生だったと思います。

――晩年は家族に囲まれて、悠々自適に余生を過ごしたのですか。

いやいや、渋沢はただ単に長生きをした人じゃないんですよ。長く生きさせてもらうからには、求められるときには動かなくてはいけないと亡くなるまで考えていました。

晩年になっても自分のことは自分でしっかりと行いながら、一方で世の中のために動き続けることを自らの使命だと感じて、最後の最後まで世の中に尽くしたのです。そもそも主著となる『論語と算盤』を世に出したのも76歳のときですからね。

渋沢の長い人生のどの局面を切り取っても、生き方のヒントになる要素がちりばめられている。特に超高齢化社会を迎えている日本ですから、渋沢の人生はこれからも多くの日本人のモデルになりうるでしょう。

時代考証担当者として見る「渋沢栄一」

――井上館長は「青天を衝け」の時代考証を担当なさっていますが、ドラマという性質上、ある程度は娯楽性も持たせなくてはなりませんよね。史実とのすり合わせにご苦労なさっているのでないですか。

つらいところです……(笑)。ドラマですから、当然、フィクションの部分が入り込んできます。ただ、大河ドラマの場合は、より緻密に時代考証がなされていると思いますよ。制作スタッフは、本当に細かいところまでこだわっている。

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例えば、渋沢が父親に叱られるシーンがあります。その際、正座をして父親の話を聞いている。でも当時は、胡坐なんですよね。しかし、胡坐をかいているのを画面で見ると、今の人には叱られているようには見えません。では、どうするのか……。こういう細かいところまでスタッフの方たちは考えて議論しています。

それから「客人を迎え入れるときは、お茶を出していましたか、それとも白湯ですか」と聞かれたりもしました。画面上では見えないでしょうけど、そこまで徹底的にこだわっています。演出・美術スタッフは本当に大変でしょうね。

時代考証の担当者として脚本を読んだとき、「こんなふうに表現してもらえればいいな」と思い描いていた場面があります。実際にロケ現場に行って、そのシーンの撮影を見たら、まさに私が思い描いていたものと合致するような巧みな演技を俳優さんがしていたので、感動しました。役者さんは役者さんで、自分が演じる人物に対する独自の理解をもって演じられていますが、そのつながりを感じての感動でもありました。

ドキュメンタリーではないので、多少フィクション的な面があっても割り切って、ドラマとして楽しめばいいと思います。より正確に渋沢栄一を知りたい場合は、自伝や回顧録に触れていけばいいのですから。

デフォルメして弾みをつけることで、渋沢という人間がより広く、多くの人たちに伝わるような気がします。そこはドラマの強みなので、活かしていただきたいです。

(取材・構成 野口孝行)

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