成功の肝は忍耐、渋沢栄一に学ぶ「頭の下げ方」

大河ドラマ時代考証者が語る5つのポイント

――資本主義とは、意図的に一線を画していたのですね。

渋沢は「道徳経済合一説」を説いています。これを唱え続けたのは、資本主義的な考え方で直近の利益や即時成果を求めてしまうと、それが人間としての過ちの元になるというメッセージを込めたかったからでしょう。事業というのは、公益に沿って永続し、社会に定着していかねばならない。これが渋沢の持論でした。

――これは、いつの時代になっても大事にすべき考え方ですね。

次の側面も、今に共通するものではないでしょうか。渋沢が設立や運営に関与した企業は約500社あるといわれます。実は、それらの会社が発展していく過程において、不祥事を起こしたケースがいくつもあるのですが、それらが発覚した際、「原点に立ち返ろう」ということで、創立当初の渋沢の事業・経営理念見直しをはかるケースが繰り返されています。

規範となるものを基にして、禁止事項ばかりで、身動きがとりにくくするのではなく、やるべきことには積極的に取り組み、克服していこうという気持ちを渋沢は持っていました。

ただし、もしも間違いがあれば、論語的な道徳観に立ち返り、自らを省みる姿勢を忘れなかったのです。渋沢も実体験の中でそれを重ねていたのです。こうした姿勢の大切さは、特に系譜をひく現代の企業や個人にしっかりと受け継がれていると思います。

本業そのもので社会に貢献する

――決して経済一辺倒で突っ走らなかった渋沢の姿勢には、参考になる点が多いような気がします。

そうですね。それを象徴するのが3つ目の社会貢献と言ってもいいでしょう。渋沢は、生涯で約600の社会事業に力を尽くしたと言われます。今日、社会貢献事業はどの企業にとっても当たり前のことで、それを積極的に行っているところが多いですね。

ところが、今行われている社会貢献事業というのは、まずは本業で利益を上げ、その一部を社会に還元するために寄付をしたり、事業を立ち上げたりするものが多数を占めます。つまり、本業とは“別物”として扱う傾向があるのです。

しかし、先駆者たる渋沢は違った。立ち上げた本業そのもので社会に大きな経済発展をもたらし、直接世の中に還元するようにしたのです。それを成し遂げることが企業の最たる責任であり、真の社会貢献だと考えていました。スタンスがまったく異なるのです。社会貢献事業の本質を正しく理解し、体現していたと言っていいでしょう。

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