日本の文化やアートに決定的に欠けている視点 片岡真実さんが説くグローバルでの日本の価値

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森美術館館長の片岡真実さんと徹底的に議論しました(撮影:間部 百合)
グローバルの舞台で、かつてあったはずの輝きとプレゼンスが日本から失われているのはなぜなのか。そして、そこから脱却するためには何が必要なのか。
政府、企業、市民社会、専門家との連携を通じ、テクノロジーを最大限に活用して社会課題を解決するための必要なルールづくりと実証を推進する「世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター」。その初代センター長を務める須賀千鶴氏が、日本を代表する各界の知識人に真正面から問いかけて議論していく対談シリーズ第5回。

世界は「ローカル」の集まりでしかない

「文化」が、社会の変化をつねに先取りする存在であるのだとすれば、「文化」における日本の現在地や課題をたどることは、グローバルにおける日本の立ち位置や、今後のあり方を見いだすための重大なヒントになるのではないか。そのような考えのもと、今回、お声がけさせていただいたのは、キュレーターとして、国内外で豊富なキャリアを築かれ、現在は日本の森美術館館長を務めながら、国際美術館会議(CIMAM)の会長として、国際組織をリードする片岡真実さんだ。現代アートのトップランナーである片岡さんと、分断の社会において求められることや、日本がグローバルで発揮すべき価値について議論した。

須賀 千鶴(以下、須賀):本日はどうぞよろしくお願いします。片岡さんは森美術館の館長を務められていますが、昨年、国際美術館会議(CIMAM)の会長にも就任されています。

片岡 真実(以下、片岡):会長職に選出されたことは、大きな時代の流れに合っていたこともあるかと思います。組織の中にも、もはや白人男性がプレジデントを務める時代ではないだろうという空気があり、非白人・女性ということで、立候補してほしいと頼まれたんです。非西洋圏の中では、日本の博物館、美術館の歴史は長いので、そういった意味でも、日本人に任せることの安心感はあったかもしれません。結果、1962年の創設以来、非ヨーロッパ圏から初の会長が選ばれたことはCIMAMの歴史にとっても意味があると思います。

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須賀:会長に就任されてから、ご自身の中で変化はありましたか?

片岡:新たな変化ということではありませんが、気になるのは、日本では、「日本」と「世界」という対比の仕方をして、「世界」というところに何かいいもの、優れているものがある、という考えを持っている人がとても多いことでしょうか。

「世界」と呼ばれているものは、何か大変すばらしいものでは決してなく、いいことと、悪いことが同時に詰まった、ローカルの集まりでしかない、ということは重要なポイントだと思っています。世界には、モデルとすべき要素はたくさんありますが、そういった要素を集めて、自らはどうするべきなのかということを自分で考えなければ、モデルがあったとしても、その先には何もありません。

須賀:日本は、欧米のキャッチアップ型で成長してきたからこそ、基本動作としてまず、西洋や他の国をモデル化することから始めてしまいますよね。国際芸術祭「あいち2022」の芸術監督に就任された経緯はどういったことがあったのでしょうか?

片岡:まず、私自身が愛知県の出身なんです。東京や大阪に比べて、文化不毛の地と言われがちな愛知県ですが、長年、愛知県ではやれることはたくさんあると思っていたので、それを形にしたくて、芸術監督をお引き受けしました。

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