日本の文化やアートに決定的に欠けている視点 片岡真実さんが説くグローバルでの日本の価値

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片岡:今、求められているのは、51%と49%の両方の気持ちをバランスよく受け入れられるプラットフォームです。それは、白人なのか、黒人なのか、西洋なのか非西洋か、「お前はどっちなんだ?」という議論ではなく、複数の異なる要素が塩梅よくそこにいられるための場所が重要だということです。

それはすべてが同質になるように隅々まで調整されたシステムではなく、差異が共存しつつ、そのバランスも臨機応変に変わっていけるような、白と黒の関係性が流動しながら、均衡を模索するような図式になると思います。それは、太極図にみる東洋的な宇宙の摂理でもあります。

須賀:「陰陽」のようなお話ですよね。

片岡:はい。東洋の伝統的な思想の系譜だと思います。シドニービエンナーレでは、陰陽五行説の「五行」から着想を得て、異なる次元が同時に存在する「スーパーポジション」というテーマを量子論から借用しました。スーパーポジションの可能性を考えるうえで、五行思想はとてもよくできていると思います。

ジャンケンもそうですが、あるモノには勝つが、あるモノには負けるという形で、全体が成立していて、その時々によって、優劣が決まる。絶対的な勝者はいなくて、すべては相対的であるという考え方が自分自身の価値観に共鳴すると自覚し始めたのは、振り返れば、40歳を超えたあたりですかね。

コロナ禍はアートにどんな影響を?

須賀:コロナウイルスのパンデミックは、アート業界にどのような影響をもたらしていますか?

片岡:現代アートはリアルタイムで世界の状況を投影しますから、世界が抱えている課題とアート界のイシューは、ほぼ同義にあると思っています。去年1年間を振り返ると、世界的なパンデミックが発生し、その後は、ブラックライブズマター(BLM)の運動が起こりましたが、これらの出来事は、美術館活動にも即効的な形で影響を与えています。

とくにアメリカの美術館はBLMから派生して有名なキュレーターの辞職なども相次ぎました。美術館の組織自体のダイバーシティー、コレクションの人種やジェンダー的視点からの公平性も厳しく追及されるようになりました。このようなダイバーシティーに関する問いかけは、BLMの運動が広がる以前からありましたが、現代アート界でも改めて大きく取り上げられ、もはや、すべての関係者が避けては通れない問題になった1年だったと思います。

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