転職で「年収が下がる人、上がる人」決定的な差 業界ではなく「自分を売り出す市場」を意識せよ

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

このAさんとBさんについて、もう少し考えてみましょう。

自分のことを「人材派遣営業のプロ」と定義しているAさんと、「営業組織構築のプロ」と考えているBさんでは、「自分でどんな勉強をするか」という点1つをとっても、違いがでてくるはずです。たとえば「どの勉強会に参加するか」を選ぶ際、Aさんは人材業界の営業のプロが集まる会に、Bさんはさまざまな業界の「営業組織構築」という課題を抱えた人たちが集まる会に行くでしょう。

こういった違いは当然、どんな仕事を希望し、選び取るかという場面でも生じてきます。すると、たとえば営業マネジャーとしての同じ3年の間に、Aさんは人材派遣営業のスキルを磨き続けるのに対し、Bさんはインサイドセールス部隊の立ち上げなど、営業組織構築の経験を積んでいくことになります。数年後、この2人の市場価値はおそらく大きく異なっているでしょう。

ビジネスの成否は「市場の定義」にかかっている

このように「市場の定義」が変わると、必要とされるスキルや経験も大きく変わってきます。これはマーケティングの文脈では、必要とされる「価値」の違いとして考えられます。

ある商品の「価値」は、その受け手によってまったく異なります。コレクターにとっては垂涎の商品が、他の人にはゴミにしか見えないといったことは普通に起こります。

だから、「価値のプロデューサー」たる商品のマーケティング担当者は、まず最初に「誰を相手とし、どの市場で勝負するか」を決める必要があります。「相手=市場」を定義するのです。

実際には、広告や商品開発の現場でもあまりしっかりと議論されず、曖昧なまま企画が進められることも少なくありませんが、事業の失敗や成功は、この「市場の定義」にかかっていると言っても過言ではありません。

たとえばアップルのPC「マッキントッシュ」は、当時の主なユーザーであった「パソコンマニア」のみならず、「クリエーター層」をその向き合う相手としました。美しいデザイン、フォントへのこだわり、はじめから同梱されたクリエーター向けツールなどは今でも連綿と続くアップル製品の特徴ですが、それはこのとき新たに定められた「相手」から導かれたものだとも考えられます。アップル製品の革新は、まず「誰を相手にするか」の革新からスタートしているのです。

もともと「薬」だったコーラは、向き合う相手を、食事やパーティーを楽しむ人、さらには勉強や仕事の合間のリフレッシュを求める人にまで拡大し続けました。その結果、「フレーバー」や「ゼロカロリー」などの新しい価値が次々と生み出されました。普段はビールを飲むようなより幅広いお酒好きを相手とするために、ウイスキーはハイボールという新しい価値に生まれ変わりました。

マーケティングの眼鏡をかけて近所のスーパーを見渡すと、こういった事例は枚挙にいとまがありません。

次ページ「市場を定義する」ことは個人のキャリア構築にも不可欠
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事