こんまり夫が「市長になる夢」諦め目指す高み 猛烈営業マンから妻のプロデューサーに転身

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それが功を奏したのか、ふたりはそれまでと同じように、友人同士として食事を楽しんだ。そのときに、「今、どんな感じ?」という会話から、近藤さんが全国各地で講演しながら、温泉を巡っていると知った。川原も温泉好きだったので、これからの予定を尋ねると、近藤さんが講演を予定している場所のいくつかが、川原の出張先とかぶっていることがわかった。「それなら、また現地でおいしいものでも食べに行こう」という流れから、ふたりの仲は深まっていった。

交際するようになって半年が経った頃、川原はボランティアで近藤さんの手伝いをするようになった。近藤さんから「自分ひとりで片付けをするには限界がある。片付けを仕事にしてもらえるような仕組みを作りたい」と話を聞いて、まさに人材教育をしている自分なら手伝えることがあると感じたからだ。

近藤さん直伝の片づけコンサルタントを増やすには、「こんまりメソッド」を分解しなければいけない。川原は、近藤さんが実際に片付けコンサルをする現場に同行し、お客さんとの会話や具体的な手順を撮影した。近藤さんと行動を共にするようになると、片付けコンサルを受けたことがある人と顔を合わせる機会も増えた。その人たちは、近藤さんのおかげで人生がどれだけ変化したのかを、川原に熱く語った。

片付けコンサルの現場を知り、片付けの魔法にかかった人たちの言葉を聞いているうちに、川原は自分の仕事に対する限界、そして1つの想いをいだくようになった。

「僕は3日間で18万円、トータルだと150万円ぐらいするセミナーのコースを売っていたんですけど、この金額を支払える人は限られますよね。片付けって、本人がやる気にさえなれば誰でもできる人生の変革だから、これを広めるほうが、世のためなんじゃないかなって思ったんです」

「会社を辞めて、そちらに集中しなさい」

近藤さんや、近藤さんの顧客と話をするたびにその想いは募る。そこで川原は、より本格的に近藤さんをサポートしようと心に決め、自分をかわいがってくれた大阪支社長に直談判した。

「実は、“こんまり”の近藤麻理恵さんと付き合っていて、これまでボランティアでお手伝いをしてきました。そちらにもっと力を入れたいと思っているので、これまでのように会社に出勤し続けるのは難しい。でも、この仕事はぼくの天職だと思うし、辞めたいわけではないので、外部のコンサルタント的に契約してもらえませんか?」

話を聞いた支社長は、こう答えた。

「それはあなたにしかできない仕事だから、会社を辞めて、そちらに集中しなさい」

え!? 川原は戸惑った。人材コンサルの仕事を辞めるつもりはなかったし、これまでそれなりに貢献してきた自負があった。それなのに、一切の引きとめもなく、あっさり、辞めなさいと言われてしまった。寂しさもあったが、それ以上に、不安の波が押し寄せてきた。

「会社員根性が染みついていたのもあって、なんの保証もない世界が怖かったんですよね。それに、せっかく自分がここまで苦労して頑張ってきて、お客さんもいて、結果も出るようになったところで、それを手放すのが嫌だったんですよ」

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