日経平均は一体いくらならバブルなのだろうか 「コロナ・ブル」と「コロナ・バブル」の差はどこか

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国債の利回りはもちろん変動するが、GDPに対する国債残高の比率を一定に保つためには、名目GDP成長率と国債利回りが等しい状態が最も自然だ。もちろん、経済政策として不景気に対しては金利を下げようとするし、景気が過熱してインフレが問題になった場合は金利を引き上げるのが常道だ。

株式のリスクプレミアムはいくらが妥当なのかに関しては諸説あるが、機関投資家の運用計画などを見ると、5%から6%くらいの数字であることが多い。アメリカに対応するPERは20倍、後者に対応するのは約16.7倍だ。あ、アメリカでは、S&P500のPERが20倍を超えると株価が割高だと言われることが多いが、PER20倍は益利回り5%なので、おおよそ、これと一致する。

大まかに言って、益利回り7%(PER約14.3倍)は「やや割安」、6%(PER約16.7倍)は「高くも安くもない」、5%(PER20倍)は「やや高い」、4%(PER25倍)は「かなり高い」、3%(PER約33.3倍)は「ひどく高い!」、というくらいに思っておくといいのではないだろうか。

現在のように政策的な金融緩和が行われていて、長期的な利益成長率よりも国債利回りが低く抑えられている場合に、債券や預金との対比で高めの株価が正当化されるが、利回りが正常化した時にはこの関係が変わることを覚悟しておく必要がある。

日経平均株価を一つの株式銘柄であるかのように考えた場合、現在の1株当たり利益は1200円を少々下回る程度の水準だ。切りのいい数字として「1株利益=1200円」と考えると、日経平均2万4000円以上で「やや高い」かもしれない水準に入り、3万円で「かなり高い」(黄色信号)となり、3万9600円で「ひどく高い」(赤信号!)となる、というくらいの見当だ。

「3万円の次の目処が3万9000円を超えるとは大雑把すぎないか?」と思われる読者がおられようが、株価というものは、そもそも曖昧なものなのだ。

こうした変化に対してどう対応するのが適切かは投資家のリスクに対する態度による。だが、信号の判断そのものが正確なものではないことを考慮すると、通常の環境での自分にとっての最適投資額に対して、「黄色信号」で1割減、「赤信号」で2割減、くらいの調整が妥当だろう。

「もっと調整したほうがいいのではないか」と思われる読者が多いかとも思うが、(1)「判断」の確度が低いこと、(2)調整には売買コストや税金が発生すること、(3)ポジションを落とした後の再投資が心理的に難しいこと、などを考えると、「上げ相場にも、下げ相場にも付き合って、長期的にリターンを取る」と考えておくことが、たぶん最も「割がいい」。1割、2割の調整は半ば気休めでもあるし手間と売買コストが掛かるが、投資に手を掛けてもいいと思う投資家は、この程度の調整を行ってもいいのではないかと、筆者は思っている。

もちろん、主に景気に連動して1株当たりの利益が変動するので、変化に応じて信号の色は変わる。今後の景気回復で「黄色」になるラインが上がることが予想されるので、投資家は、たぶん「まだ」慌てるには及ばない。コロナが居座る限り、経済政策の方向が変わる可能性は小さい。 黄色信号の手前なので、少し気がせくかも知れないが、じっくり推移を眺めるのが「吉」ではないか。もちろん、運用は、「運」を「用いる」ものなので、確かなことは言えない(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。

次ページここからは競馬コーナー。共同通信杯の勝ち馬は?
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