日経平均は一体いくらならバブルなのだろうか 「コロナ・ブル」と「コロナ・バブル」の差はどこか

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コロナに関して言うなら、世界にコロナが拡がった昨年の2、3月は実体経済へのブレーキに加えて金融危機を誘発しかねない「大悪材料」だったものが、先進各国の金融・財政施策によって一部のセクターの経済活動を阻害するだけの「小悪材料」に変質し、今やコロナ対策があるおかげで株価が上がっていて、「コロナは好材料!」に転じた。

「相場はまだ若い」のか「若くない」のか

「相場の流れ」で考えて見ると、二通りの解釈が可能だ。まず、典型的な相場循環を考えると、主として金融緩和による「金余り」を背景に株価が上昇する「金融相場」の後に、実体景気が良くなって企業利益の成長が牽引する「業績相場」(による株価上昇)が続くのが、典型的な相場のサイクルだ。

「景気はどうか」と眺めると、コロナ禍にもかかわらず世界景気は回復基調にある。ワクチンが効果を発揮して経済が好調になった場合に、金融政策が引き締めに向かうリスクが相場的には怖いが、特にアメリカが重要だが、先進国の中央銀行と政府は、多少インフレ率が上昇しても失業率が十分低下するまで金融緩和と財政政策を継続する構えだ。通常のパターンで考えると、「この相場はまだ若い」。

一方「もともとどうだったのか?」という経緯まで遡ると、コロナが問題となる前のおととしの年末くらいの状況は、アメリカ企業が社債を発行して自己株買いを行うような「借金による株式投資」が拡大していて、「バブル形成の途中にある」状況だった。そこをコロナが襲って、バブル形成が中止され、株価が急落したのであった。バブルとは、過剰な借金が投資に回って資産価格が高騰する現象だ。今回は、「借金による投資」を支える主体が政府に肩代わりされて、今日の状況に至った。信用を供給する主体としての政府は強力だが、「この相場は若くはない」という解釈が可能だ。

ちなみに、1980年代後半に生じた日本のバブルを振り返ると、株価の水準がちょうど今くらいだった1988年には「相場は若くなかった」のだが、「自らの重みで落ちるほど熟してもいなかった」。金融政策的には、当時としては超緩和的な状況にあった。

さて、現在の株価は単なる「ブル」なのか、すでに「バブル」なのか。 結局、株価水準そのものを評価する尺度を持たねばならない。大まかにならざるをえないが考えてみよう。

株価は、将来の利益を、リスクを考慮した割引率で評価した現在価値の合計値だと考えられる。将来の利益成長を見通すことは難しいが、(長期的に予想される)利益成長率と国債のようなリスクのない資産の利回りが概ね均衡すると考えると、PER(株価収益率)の逆数である「益利回り」(株価に対する年間の利益の利回り)は、投資家が、株式投資のリスクを負担する「リスクプレミアム」に相当する。

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