「誰かが生きられなかった今」を生きる人の矜持

佐々涼子さん『エンド・オブ・ライフ』を語る

在宅での終末期医療を描いたノンフィクション『エンド・オブ・ライフ』の著者、佐々涼子さん(集英社インターナショナル提供)
毎日配信される1本1本の記事と同様、ノンフィクション本の書き手の思いを伝えたいと設けられた「Yahoo!ニュース | 本屋大賞 ノンフィクション本大賞」。2020年大賞に輝いた『エンド・オブ・ライフ』著者の佐々涼子さんは、自身のお母様の難病をきっかけに在宅での終末期医療を描く本著を、7年の歳月をかけて書き上げた。「命の閉じ方」を考えるノンフィクションに込めた思いを聞いた。

7年かけて思いを紡いだ『エンド・オブ・ライフ』

――『エンド・オブ・ライフ』を執筆するきっかけを教えてください。

母が神経性の難病となり、父が在宅療養をすると決断したんです。父は献身的にサポートをしたのですが、私たちが見ている前で母はどんどん弱っていきました。家族にとって特につらかったのが、意思の疎通ができなくなっていくこと。

次第に、母が何を考えて、何を望んでいるのかを知りたいという思いが膨らんでいきました。そんな自身の経験から、ほかの患者さんたちは何を思い、どういうふうに過ごしているのかを取材しようと考えるようになりました。そして、寄り添う家族の方にも話を聞こうと思ったのです。

――家族の死を描くことは難しかったのではないですか。

はい、前々作の『エンジェルフライト』から人の生き死にをテーマにしていたのですが、きっかけとなったのが母の存在だったんです。だから、2014年に母が亡くなると、書く意味を見いだせなくなってしまいました。緊張の糸が切れてしまったと言いますか。

その結果、この本を書く筆がとまりました。その間ずっと重荷を背負っているような気持ちがありましたが、「時機がこないと書けないな」とも思いました。

――2013年から取材をして、どう書き進めていったのですか。

命がけで家族と潮干狩りにいく方や、庭の桜を眺めながら自宅でミニコンサートをして見守られて亡くなった方のストーリーなど、それぞれのエピソードはすばらしいものでした。しかし、それをどうまとめてよいかわかりませんでした。

自分のさじ加減一つで、美しい感動的な一冊にもなりえます。在宅医療をただただ「素敵だよ」と賛美することもできたでしょう。しかし、自分には父のように介護をする自信もないし、こんなに強い患者にもなれない。その気持ちに正直に向かい合わなければ、おそらくその嘘が読者にもバレてしまうだろうと思いましたし、ノンフィクションを書く者の責任も感じていました。

そんなとき、看護師であり友人であった森山文則さんから連絡があって、看取りのプロであった彼ですら、自分ごととなると揺れて迷う姿に教えられることになったんです。

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