アビガンが今になっても承認下りない根本理由 どんな臨床試験が行われたか知っていますか

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二重盲検試験は誰に新薬候補が投与され、誰にプラセボあるいは標準治療薬が投与されているか、投与する医師、投与される患者ともに知らされていない、単盲検試験は医師だけがどの患者に何が投与されているか知っているが患者は何も知らない、非盲検試験は医師が誰に何が投与されたかを知っていて、かつ患者も自分に何が投与されたか知っている、という試験法である。

さらにこの3種類の試験方法では、それそれで2つのグループに分ける際に乱数のように無作為に分ける無作為化試験、無作為化を行っていない非無作為化試験の2種類のいずれかの方法を採用する。

つまり都合6種類の試験方法があることになるのだが、前述の3種類の試験方法については二重盲検試験、単盲検試験、非盲検試験の順、無作為化と非無作為化の間では無作為化のほうが科学的信頼度は高いと考えられている。つまり科学的信頼度として最上位は無作為化した二重盲検試験であり、やむをえない事情がない限りは新薬の製造承認申請の臨床試験はこの方式で行われる。

厳格な科学評価を下すために

では、なぜ患者はおろか医師までも誰に何が投与されているかがわからない方法で臨床試験を行うのか? 理由は単純でバイアスを排してより厳格な科学的評価を下すためだ。

そもそも製薬企業がある新薬候補の臨床試験を行うのは、当然一定の有効性があり、将来的に市販できれば、売り上げを確保できると見込んでいるからだ。そうである以上、臨床試験に参加する医師も患者も「今までの薬よりも有効なのではないか」という先入観を持ちがちだ。

その状態で医師があらかじめ新薬候補とプラセボがどの患者に投与されているかがわかっていれば、評価の際にバイアスが入りやすくなる。

たとえば新薬候補が投与された患者で偶然起きたにすぎない好ましい現象を「新薬候補が投与されているからだろう」と思い込んでしまう危険性がある。患者自身が新薬候補を投与されているとわかっていると、そこから得られる安心感も影響して、医師から「具合はどうですか?」と尋ねられた際に、単なる気分で「はい、調子いいです」と答えてしまい、それが医師による薬の評価に影響を及ぼす可能性がある。科学的な判定ではこうしたバイアスの余地をできるだけ排除しなければならない。そのために二重盲検試験という手法が必要になる。

もっとも「医師も患者も誰に新薬が投与されているのかもわからない臨床試験なんて実施可能なのか?」と思う人もいるだろう。結論からいえば実施可能である。こうした臨床試験の場合、参加する医師や患者、製薬企業とは独立した「コントローラー」と呼ばれる人が存在し、このコントローラーが患者の無作為化と新薬候補やプラセボ・標準薬の割り付けを行う。この割り付けに基づき、医師には新薬候補あるいはプラセボ・標準薬をそれとは告げられないまま渡され、そのまま患者に投与される。

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