アビガンが今になっても承認下りない根本理由

どんな臨床試験が行われたか知っていますか

より詳しく説明すると、主要評価項目では、体温が37.4℃以下、酸素飽和度が96%以上、胸部画像所見が最悪の状態から改善の3つを患者が満たした段階にまずPCR検査を行い、この1回目のPCR検査から48時間後に2回目のPCR検査を実施する。このPCR検査が2回とも陰性だった患者だけを選び出し、アビガンあるいはプラセボの投与開始から1回目のPCR検査陰性までの期間を比較している。

また、副次評価項目の「7段階スケールによる患者状態推移」というのは、患者の状態を退院から死亡まで7段階の状態に分類し、通常は2段階以上改善した場合を薬の効果があったと判定する手法である。

今回のアビガンの臨床試験の結果については今のところ医学論文などとして公開されていない。ただ、富士フイルムが結果の一部を記載したプレスリリースを公表しており、主要評価項目の「症状(体温、酸素飽和度、胸部画像所見)の軽快かつPCR検査で陰性化するまでの期間」はアビガンを投与したグループが11.9日、プラセボを投与したグループが14.7日となり、アビガンを投与したグループでPCR検査による陰性化確認までの期間が約3日短くなっている。

ちなみに薬の有効性を厳格に判定する際は、統計学の計算手法で2つのグループで発生した差が偶然起きたものではない、つまりアビガンの投与かプラセボの投与かの違いにより発生したかどうか吟味する。この手法で偶然ではない差と認められた場合は、専門用語で「統計学的に有意差が認められた」と表現する。

今回のアビガンの臨床試験では、前述の日数の差はまさに統計学的な有意差が認められている。つまりアビガンの投与があったからこそ陰性化までの期間が約3日間短縮されたことになる。

この約3日の短縮という結果についての解釈は人によって分かれるかもしれない。「たったの3日?」と言う人もいるだろう。一方で患者にとっては苦痛な症状の期間が3日短くなるのは喜ばしいはずだし、現在のような感染拡大による病床逼迫を考えた場合、患者の入院期間が約3日間短縮されるならば「医療崩壊」を防ぐ可能性もある。

実はバイアスが入りやすい試験方法だった?

ところが統計学的な手法を使って厳格な科学的評価をしたうえで一定の有効性が認められたはずなのに、なぜ薬食審医薬品第二部会は、「データから有効性を明確に判断することは困難」との評価を下したのか? ここがまさに単盲検試験であるがゆえなのだ。

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