「お笑い第7世代」台頭が示すテレビの劇的変化 従来の価値観では視聴者に受け入れられない

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こうした芸人たちに光を当て、お笑い番組の可能性を示した「有吉の壁」。その成功もあってか、2020年10月の改編ではゴールデンでレギュラー化した「千鳥のクセがスゴいネタGP」(フジテレビ)やプライム帯に昇格した「勇者ああああ」(テレビ東京)を筆頭に、ゴールデン・プライム帯にお笑い番組が急増。

テレビ朝日では土曜・日曜のプライム帯を「あざとくて何が悪いの?」「ノブナカなんなん?」「爆笑問題&霜降り明星のシンパイ賞!!」「テレビ千鳥」と、お笑い系の番組で固める戦略に打って出た。

さらに深夜には、“バラバラ大作戦”と銘打って、「かまいガチ」「秋山とパン」など14もの新番組を立ち上げた。そのなかには前述の「イグナッツ」を始め、VTuberブイ子がバイきんぐの小峠英二と組んだ「ブイ子のバズっちゃいな!」やアイドル・あのによる「あのちゃんねる」、新日本プロレスのプロレスラーによる「新日ちゃん。」など、ジャンルの枠を超えた番組を志向していることが垣間見える。

個人視聴率の重視も変化の要因

これには、世帯視聴率から個人視聴率が重視される指針へと変わってきたことが要因としてあげられるだろう。

「13~49歳を日本テレビは“コアターゲット”、フジテレビは“キー特性”と呼び、TBSは13~59歳を“ファミリーコア”と呼んで、スポンサーのニーズが高いこの年齢層に向けた番組作りを進めている」(「東洋経済オンライン」20年10月4日)という。また、TVerなどの回転数やランキングも重視されるようになったと聞く。

指針が変われば、番組作りもそこに出る人材も変わるのは自明のことだ。これまでは安心感を好む高齢者向けに作っていたから、おのずと出演者も固定化されてきた。けれど、新鮮さや刺激を求める若者に向けるのならば、たとえ無名でも新しい才能を持った人材が重宝されていくだろう。キャスティングは新たな時代を迎えたのだ。

戸部田 誠 (てれびのスキマ)ライター

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とべた まこと / Makoto Tobeta

1978年生まれ。静岡県出身。読売新聞、日刊ゲンダイ、「水道橋博士のメルマ旬報」、『週刊文春』、『週刊SPA!』、『CREA』などで連載。著書に『タモリ学』(イーストプレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビえげつない勝ち方』(文藝春秋)など。ギャラクシー賞テレビ部門委員。

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