18歳だけを相手にしていては大学は衰退する 「ジョブ型雇用」で企業が大学のライバルになる

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例えば同じ領域で高度なレベルまでの成長を求める場合であっても、まったく別の畑からの学び直しと、一定の知見を有している場合ではスタートラインは大きく異なる。だからこそ大学視点では千差万別のスタート地点に対応できるプログラムの提供が求められる(リスキル・リカレント教育が広まれば、スタート地点の異なる学習者もまた増えるだろう)。

また、業務経験や実績の蓄積につながる実践的な学びや、資格の取得など、これまでの大学教育よりもより目的を明確にしたスキルのアップデートにも大きな需要が生まれると考えられる。

そして、そこで学びの機会を提供するのは、大学だけでなく、企業の場合もある。実際、MOOC(Massive Open Online Course)と呼ばれる、CourseraやedX、日本ではgaccoなどのインターネット上で無料または安価に大学や企業の講義を受けられるプラットフォームが台頭してきており、人材育成という市場における大学と企業が競合する状況がすでに生まれている。

ビジネスと教育がボーダーレス化する中での大学戦略

こうしたことを踏まえると、これからの大学が描くべき戦略が見えてくる。研究で未来創造を志向する大学は、研究成果を活用した絶え間ないイノベーションの実現がその中心にくる。

一方、人材輩出で社会の要請に応える大学は、英語力や文化理解力(これには日本への理解も含まれる)を持ち、新たな体験価値を創出できるグローバル人材や明確な強み・スキルを持った人材の絶え間ない育成がトップアジェンダとなる。

ここでポイントは“絶え間ない”というキーワード。大学が大学としてその座に君臨し続けるには、自学の掲げるパーパスに基づく人材育成をいかにしてシステムとして創り上げるかが大きなポイントになる。

ビジネスも教育もボーダーレス化が進んでいる今こそ、大学は自学のパーパスを再定義し、企業と切磋琢磨しながら「人材育成マーケット」でのプレゼンス向上を推し進めなければならない。パンデミックによる変化は、もはや逆戻りしない。ニュー・ノーマルをいち早く実践し、システムとして定着させ、他者から認知されていく大学こそが、これからの「強い大学」といえるのではないだろうか。

根本 武 アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 マネジング・ディレクター

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ねもと たける / Takeru Nemoto

中小企業診断士、経済産業省システムアナリスト。2007年にアクセンチュア入社以来、教育・研究機関、および教育関連企業向けの支援に従事。戦略策定からM&A、業務・システム改革、アウトソーシングまで多岐にわたり主導。近年は国立大学(経営統合全体支援)、大手教育サービス企業(経営戦略策定)、研究機関(バックオフィス改革支援)等の大規模改革を担当。

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