新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、スタートアップ企業が顧客や従業員における感染リスクの低減を手助けするサービスを相次ぎ投入している。
IT(情報技術)を活用して働く現場や店舗の接触・混雑状況を可視化したり、遠隔地から接客したりできるシステムを提供。感染防止対策と経済活動との両立を後押しする。
2020年8月、群馬県高崎市に「無人」のモデルハウスが登場した。一般的なモデルハウスとは違い、不動産会社の社員の姿は見えない。
「いらっしゃいませ。自由に見ていってくださいね」
内覧客が⼊ってくると玄関に設置されたタブレットの画⾯に鳥のような姿をしたコンピューターグラフィックス(CG)のキャラクターが現れ、客に話しかける。
客は自由に建物や設備を見学、聞きたい点が出てくるとテレビ画面に向かって質問する。「平屋なのになぜ安いのですか?」――。キャラクターは画面に資料を見せながら客からの質問に答える。
キャラクターの正体は離れた場所にいる不動産会社の社員だ。戸建て住宅を主力とするケイアイスター不動産がITスタートアップのタイムリープ(東京都千代田区)の協力を得てモデルハウスの無人化を実現した。
実物を見たい人にも対応できる
ケイアイスター不動産ではタイムリープが提供する遠隔接客システム「RURA」(ルーラ)を導入。展示場近くの事務所にいるスタッフがカメラ映像で店内の様子を確認し、客が入ってくるとウェブを通じてリアルタイムで対話する。顧客に映し出される画面にはCGキャラクターのほか、スタッフの顔を出すことも可能だ。
ウェブでの対話は「Zoom」(ズーム)など主に会議で使われているソフトもあるが、RURAは接客に特化しており、複数のスタッフが複数の店舗をまたいで接客できるのが特徴だ。
各店舗で行っていた接客を1カ所に集約することでコストを減らしたり、専門知識のある人材を有効活用したりできる。
「コロナ禍でなるべく人と関わりたくないが、実物を見てみたいというお客様に対応できる」。ケイアイスターの子会社の、カーザロボティクス(群馬県高崎市)でマーケティング責任者を務める小林栄和氏は導入理由をこう説明する。
従業員の感染防止対策につながるうえ、「顧客が対面では遠慮して聞きにくいローンの話など深い会話がしやすい」という。将来は遠隔接客を在宅勤務の従業員にも広げるなど、感染予防とコスト削減を進める考えだ。
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