感染力高い変異種の病原性「弱いはずがない訳」 インフル研究の第一人者が見るコロナの先行き

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カギを握るのはブタです。ブタは人と鳥の両方のインフルエンザウイルスに感染するレセプターを持っている。レセプターとは、ウイルスの持つ鍵に合致する受容体のこと。

つまり、人と鳥の両方のインフルエンザウイルスの鍵穴を持っているブタに、両方のウイルスが同時感染し、体内で交雑してブタで受け継がれた結果、人に感染できるウイルスが生まれることがある。人類が経験したことのない型だと、これが新型インフルエンザウイルスとしてパンデミックを起こすことになる。

ウイルスの起源と伝播経路は未解明

――1968年の香港かぜの伝播経路を突き止めましたね。

カモ由来のウイルスがアヒルなどの家きんを経由してブタに感染し、同時に人のアジアかぜウイルス(H2N2)に感染したブタの体内で、この両方のウイルスが交雑して生まれたのが、H3N2の香港かぜであることを実証しました。2009年の新型インフルエンザウイルスも、メキシコかアメリカ南部のブタを介して生まれたことがわかっています。

全世界でブタの感染を注視しておくことが、新型インフルエンザウイルスの出現予測につながります。だから伝播経路の解明は大切なんです。重症急性呼吸器症候群(SARS)もコウモリが自然宿主だというのは確かかもしれないが、中間宿主が分かっていない。

新型コロナウイルスの伝播経路を解明するためにWHOの調査団が中国に入っているが、中国がどこまで調査に協力してくれるかにかかっている。そう簡単ではない。いずれにせよ、このウイルスの宿主と考えられるコウモリから直接、人に感染したとは思えない。必ず中間宿主がいるはず。

気になるのは、動物から人に感染を始めたばかりの新型コロナウイルスが、いきなりこれほど人に適合して中国・武漢で見られたような効率のいい感染爆発を起こすとは思えない。どこかで小規模の流行があって、インフルエンザと勘違いして見逃していた可能性もある。少なくとも、武漢の海鮮市場で人への感染が始まったという情報には疑問がある。

――変異株対策として、国境封鎖は有効ですか。

感染症に国境なんてありません。国境の封鎖がまったくダメだとは言わないが、いずれ入ってくるわけだし、日本だけで解決しようとしても意味はない。それに日本で増殖しやすい別種の変異株が生まれている可能性だってあります。全世界が連帯して対策を練らないといけないし、すべきことは、いまと同じです。マスクに消毒、それに3密をさけるなどの基本的な対策の徹底だ。

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