感染力高い変異種の病原性「弱いはずがない訳」 インフル研究の第一人者が見るコロナの先行き

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実は、鳥インフルエンザウイルスの場合は、水を介して鳥に感染するのが主だが、感染した鳥を食べたカラスやアザラシが全身感染して死んでいるケースを何回も目撃した。個人的な感触だが、飛沫感染より胃に入ったほうが重症化するような気がする。だから、ウイルスの付いた手で食事をしないよう手洗いは重要だと、知人には伝えている。

とにかくいまは、感染拡大を止めることに力を注ぐべき。重要なのは経済か感染防御かで、あやふやな対策を講じないこと。そもそも両立させるのは無理です。優先順位を決めて失敗を恐れずにやること。命を最優先するためにはどうしたらよいかを考えるべきだと思います。

ワクチンは感染を防がない

――ワクチンが間もなく日本でも接種される予定ですが。

変異株に対するワクチンの有効性は、塩基配列が少しくらい変わったとしても、抗体を誘導する抗原を決める部分に大きな変異がない限り大丈夫だとは思う。世界中の人に免疫ができた後、選択圧力が加わって、その部分に変異が起きる可能性はゼロではないが。流通し始めたメッセンジャーRNA(mRNA)のワクチンは、人類史上初めての試みで、効き目と副反応の程度については未知数です。

これまでのワクチンは不活化ワクチンが主流で、有効性に疑問符が付けられていた。今回のmRNAワクチンは90%とか95%とか言われる有効性だけど、そもそも感染を完全に防ぐことはできない。気をつけなければならないのは、ワクチンを打っても症状を抑えるが、無症候や軽症だとしても少量ながらウイルスは排出する。ウイルスを撲滅できるわけではない。

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中国では、鳥インフルエンザのワクチン製造を国策として進めている。そのために鳥インフルエンザウイルスがなかなか消えないのと同じ理屈です。ワクチンは発症を抑えるが、感染しても、それに気づかない。結果的にウイルスが広がってしまっている。昨年から今年にかけて日本でも相次いでいるH5N8鳥インフルエンザウイルスによる養鶏場の被害も、このため。

新型コロナウイルスも、ウイルスの特性をよく解析したうえで対策を立てないと、間違った方向に進んでしまうと思いますよ。

辰濃 哲郎 ノンフィクション作家

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たつの てつろう / Tetsuro Tatsuno

1957年生まれ。慶応義塾大学法学部を卒業後、朝日新聞社に入社。支局、大阪社会部を経て、東京社会部で事件担当や遊軍キャップ、デスクなどを務める。2004年退社。主な著書は『ドキュメント マイナーの誇り―上田・慶応の高校野球革命』 『海の見える病院 語れなかった「雄勝」の真実』、共著は 『歪んだ権威 密着ルポ日本医師会~積怨と権力闘争の舞台裏』 『ドキュメント・東日本大震災 「脇役」たちがつないだ震災医療』。佼成学園高校で甲子園に出場。慶応大学では投手だった。関連して著書に『ドキュメント マイナーの誇り・上田慶応の高校野球革命』がある。

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