「平時でも罰則科せる」特措法改正の重大な欠陥

「まん延防止等重点措置」というグレーゾーン

特措法改正案の早期成立に意欲を示す菅義偉首相(写真:ブルームバーグ)

現下のコロナ禍に対応するため、政府から新型インフル特措法および感染症法の改正案が提出され(1月22日閣議決定)、予算委員会などで議論が開始されている。しかしそれぞれの改正案には、その効用にも疑問があるばかりか、法的に重大な欠陥をはらんでいる。

筆者も法律家としていち早く、発起人でもある「緊急事態宣言に慎重な対応を求める有志の会」の弁護士4名で、改正案の対案としての条文案(緊急提言:緊急事態でなくても権利制限を認める法改正案は抜本的に修正すべきである)を数日でまとめ、発表した。

成立を急ぐ法案であるからこそ、専門家の知恵を結集すべきところ、本質的な議論がなされないまま成立してしまう強い危機感から、緊急提言的に本稿の筆をとった。以下では、改正案の本質的問題点と、改善すべき方向性を提示する。

新設する「まん延防止等重点措置」の問題点

まず今回の法改正の目玉は、いわゆる「平時」と緊急事態宣言の中間に、グレーゾーンとして「まん延防止等重点措置」を新設する点だ。いわば緊急事態宣言の前段階の“プチ緊急事態宣言”である。

「まん延防止等重点措置」とは、首相が実施すべき期間や区域を公示し、それを受けて該当区域の都道府県知事が一定の業態の事業者に対し、営業時間の変更などを「要請」する。正当な理由がなく要請に応じない場合には「命令」ができ、命令に違反した場合には30万円以下の過料を科せる。

まん延防止等重点措置は、発出されている現行の緊急事態宣言よりも強力な措置(制限)として、要請に応じない場合の「命令」や「罰則」までが規定されている(これに伴い緊急事態宣言も命令および罰則を導入)。

やや抽象的だが、平時とは通常われわれが前提としている「人権」や「法の支配」といった原則が守られる状態だ。有事=緊急事態となれば、国家ひいてはわれわれの市民社会を維持するために、当たり前の「人権」などの立憲的秩序を一旦ストップする世界に足を踏み入れることになる。だからこそ、平時と有事の切り分けは重要だ。

しかし今回の改正では、平時と有事の境界線を溶解させてしまうおそれがある。緊急事態でもないのに緊急事態と同等の措置がとれるとすれば、われわれの生きる「平時」は、事実上「有事」の濁流に飲み込まれる。

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